2020 Fiscal Year Research-status Report
大都市圏インナーエリアにおける持家のアフォーダビリティに関する研究
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20K13268
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
熊野 貴文 京都大学, 文学研究科, 助教 (60865848)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 親―成人子関係 / 家族移動 / 居住地移動 / ジェンダー / ライフコース |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の中核的作業として、大阪都市圏のインナーエリアにおける持家取得世帯を対象にインタビュー調査を実施する予定だったが、コロナ禍で対面による調査が困難になってしまった。そのため、代替の調査方法を検討している。その中でも特にオンラインでの調査を本格的に導入する予定である。一方、本研究の関心の一つである、親―成人子の近接性と関係性について、英語圏の議論を整理する作業を行った。家族社会学、経済学、人口地理学などの先行研究を整理し、福祉国家制度と家族の近接性の関係、家族の近接性と接触・支援の相互作用、ライフコースの視点からみた家族のlinked livesといった論点を導出した。また、同様に本研究の関心に含まれる家族移動の意思決定やアウトカムについても、英語圏の先行研究を整理する作業を行った。家族移動のアウトカムとして女性の有償労働や家庭内労働に負の影響が大きいこと、そうした効果は新古典派モデルの人的資本論だけでは説明できずジェンダー規範が影響していると考えられること、移動の意思決定やアウトカムにおいてもライフコースの視点が重要であることが示唆された。その他、本研究と関連して、家族世帯のインナーシティ居住(family gentrification)、成人子の持家取得に対する家族の支援、近年の都市内居住地移動の動向について、欧米都市を事例とした新しい知見を得た。今後も、大阪を対象にした現地調査と並行して、欧米先進国の都市あるいは東アジア都市を対象にした海外の議論を積極的に取り込み、自分の研究を位置付ける作業も行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、中核的作業として、大阪都市圏のインナーエリアにおける持家取得世帯を対象にインタビュー調査を実施する予定であった。しかし、京阪神圏では新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、インフォーマントとの対面での調査はもとより、現地を訪問することさえ難しい時期が続いた。この影響によって、研究の進捗は大きく遅れた。なお、現時点でコロナ禍が終息する見通しが立たないため、上述の通り、代替の調査方法を検討している。一方、現地での調査が難しいなか、英語圏の先行研究を整理する作業時間を確保することができたため、本研究をより広い学術的・国際的文脈に位置付けることができた。その点で、研究は一定程度進捗したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、調査について、現時点でコロナ禍が終息する見通しが立っていないため、オンラインでの代替の調査方法を検討している。しかし、そのためには調査設計からインフォーマントの確保・対応まで新たに取り組まなければならない作業が発生する。難しい状況ではあるが、できる限り今年度にデータを着実に収集し、そこでの成果を学会報告に結実させたいと考えている。 第二に、先行研究の整理について、今後も、欧米先進国の都市あるいは東アジア都市を対象にした海外の議論を積極的に摂取して、自分の研究を位置付ける作業を引き続き行っていく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、本研究の中核的作業として実施する予定であった、大阪都市圏のインナーエリアにおける持家取得世帯を対象にしたインタビュー調査が2020年度に実施できなくなったためである。本来であれば、インフォーマントへの謝金や音声データの文字データ化の費用が発生する予定であったが、インタビュー調査自体が実施できなかったため、その分が翌年度に繰り越しとなった。 次年度の使用計画としては、現時点でコロナ禍が終息する見通しが立っていないため、オンラインでの代替の調査を検討しており、そこでの謝金等を支払う予定である。また、調査と並行して進めている先行研究の整理で必要になる海外の書籍・文献を購入する予定である。
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