2021 Fiscal Year Research-status Report
農村地域における情報通信技術の利用と創造的活動に関する研究
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20K13270
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
佐竹 泰和 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 講師 (50834008)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 創造的人材 / テレワーク / 副業 / 情報産業 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は,創造的活動の一事例として,地域の課題解決に資する企業活動とその人材との関係について調査研究を進めた。具体的には,昨年度に実施した高知県におけるサテライトオフィスの調査を拡張し,情報関連企業を中心に県内企業へのヒアリング調査を行った。地域課題に対する創造的活動をビジネスの側面から進めていくためには,課題の汲み取りや企画立案能力を有する創造的な人材が求められる。しかし,人口規模の小さい高知県内では大都市圏に比べて相対的にこうした人材の不足が予想される。 本研究で対象とした情報関連企業を例にすると,事業の新規立案や企画営業などに都市圏の副業人材を活用していた。求める技能の特性から,必ずしも現地で就業する必要はなく,オンラインによる就業が多い。たとえば,月数回程度のオンラインミーティングへの参加などが副業内容として挙げられる。なお,高知県は副業人材の活用を進め,県外から副業による人材確保を進めるために2021年度より副業人材とのマッチングを図る民間のプラットフォームの利用を開始した。 一方で,こうした副業人材が求められる背景には,次のような構造的問題があると考えられる。最も大きな問題として,高知県の情報産業の中にはバックオフィス業務やニアショア開発のような大都市圏企業の業務を請け負う企業が多いことから,特定の技能に秀でた技術者は育つものの,新たな事業を創造する環境に乏しいことが挙げられる。このような問題から県内のみで創造的人材を確保することは困難であり,副業人材への注目が集まった。 以上のように,ICTの発展やテレワークの普及ともに,地方における外部人材の活用可能性が高まっている実態が明らかになった。課題は残るものの,特に農村地域のように人口規模の小さい地域においては,創造的活動に対する外部人材の影響は今後より高まるものと予想できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は,「創造的人材・企業のICTの利用目的やその内容を明らかにする」ことを目的としており,コロナ禍のために研究事例地域の選定を十分に行うことはできなかったものの,一事例地域について綿密な調査を行うことができた。また,国際研究集会を通じて日本の事例を発信することもできた。一方で,2020年度の遅れを取り返すほど調査は進展していないため,事例研究を追加して研究課題にアプローチする必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は企業活動に注目したため,もうひとつの研究課題であるまちづくりにおける創造的人材とICTとの関係について調査研究を進める。具体的には,2020年度以降コロナ禍の影響で頓挫していた雲南市におけるフィールドワークを行い,地域自主組織の活動把握や地域住民へのヒアリング調査を通じてまちづくりとICT利用との関係を明らかにする。このほか,2021年度に実施した首都圏在住者に対するテレワークによる地方参画に関するアンケート調査の分析を進める。同時に,これまでの研究成果のまとめと補足調査を実施する。
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Causes of Carryover |
2020年度と同様,COVID-19の拡大防止のため遠隔地におけるフィールドワークを十分に実施できなかった。しかし,研究計画に沿って本研究を遂行するためには現地におけるフィールドワークが必要不可欠なため,次年度使用額が生じた。したがって,その調査(島根県雲南市および比較事例地域におけるフィールドワーク)にかかる費用として使用する。
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