2020 Fiscal Year Research-status Report
Investigating of malti-layered landscapes of Ezo-a historical geographical study into the way of thinking of landscapes of Ainu and Wajin-
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20K13272
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
阿部 美香 京都大学, 人間・環境学研究科, 人文学連携研究者 (80806860)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アイヌ民族 / 風景観 / 地名 / 蝦夷地 / 和人 / 名所案内記 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,主として近世後期の古地図や名所案内記等の史料を用いながら,アイヌ民族が蝦夷地の各場所に抱く場所認識や風景観と,和人のそれらとを比較することで,蝦夷地すなわち今日の北海道における風景の重層性を解明しようとするものである。 その中で2020年度は,近世末期に出版された蝦夷地の古地図を分析対象としながら,当該図に記載されたアイヌ語地名の意味を整理し,場所と地名の関係性や特徴について検討した。具体的には,江戸期における最も詳細かつ網羅的な蝦夷図である「東西蝦夷山川地理取調圖」に載るアイヌ語地名の意味を調査・整理し、内容により分類をした。その上で地名と地形との関連や,集落分布との関係等を考察し,その場所の特徴とともにアイヌ民族の風景への見方を検討している。その結果に関しては,当初の研究計画通り2021年度前半の作業と合わせて2021年度半ばに学会発表をし,続けて学会誌への論文投稿を予定している。 また新型コロナウィルス拡大により現地調査の回数を当初の予定よりも減らさざるを得ない状況であったが,感染状況が落ち着いた折に,北海道十勝地方にフィールドを絞って現地調査を敢行することができた。その結果,当初想定していた以上に人脈が広がり,アイヌ民族の方々等から,その営みがつくり出す風景に関わるお話を多く伺うことができた。またアイヌ民族の文化関連施設等の見学も行い,今後検討対象に加えるべき史資料の知見も広められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次の二点を進捗状況判断の理由として挙げる。①近世末期の古地図を元にしたアイヌ語地名の整理から,地名と場所の関連性を概観でき,今後の文献資料分析と合わせて成果発表を行いうる見込みであること ②現地調査を想定以上に進展させられ,研究フィールドの基盤を形成できたこと ①に関しては,作業を進める中で、近世末期の古地図に載るアイヌ語地名の中には,言語辞典や地名辞典のみからは意味の判断が難しいものもあることが課題として浮かび上がってきた。その点を,現地調査や他の研究者との意見交換,さらに作業過程で得られた新たな文献等の検討から補っていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、今年度前半は地名研究を続行し,アイヌ民族の風俗案内本等も考察の助けにしながら,アイヌ民族の風景観を探っていく。後半は,近世後期刊行の,和人が記した蝦夷地に関する名所案内記を分析し,その場所認識を検討する。 2021年度も,新型コロナウィルス感染症拡大による影響を強く受けるものと予想されるため,夏にブラジルで開催予定であった国際学会への参加及び口頭発表が実現不可能となった。そのため,口頭発表および論文投稿を国内学会に切り替える。ただ,英語論文の発表も視野に,成果を国際発信できるよう努める。現地調査も敢行し難い状況が続くと予想されるが,感染状況を注視しながら挙行できる機会を掴みたい。調査は2020年度に研究基盤を形成し得た十勝地方での聴き取り調査・資料収集を中心に,前年度に現地で紹介を受けたアイヌ民族の儀礼や行事見学も試みたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症拡大の影響で,現地調査の回数が当初の計画よりも減少したことが理由である。当該使用額は,次年度に研究に必要な書籍の購入費に充てる。
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