2020 Fiscal Year Research-status Report
国際観光客増加にともなう都市の変容 ーツーリズムジェントリフィケーションー
Project/Area Number |
20K13274
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Research Institution | Osaka Seikei University |
Principal Investigator |
池田 千恵子 大阪成蹊大学, 経営学部, 准教授 (50825560)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ツーリズムジェントリフィケーション / 宿泊施設 / 景観保全 / 歴史的建造物 / 立ち退き / 路線価の高騰 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、2019年度の継続案件として石川県金沢市、そして2020年度の案件として京都市下京区菊浜、兵庫県豊岡市城崎にて調査を実施した。 石川県金沢市の調査では、宿泊施設の立地特性として、従来の金沢駅周辺の立地から金融機関の支店統合や本店の移転によりオフィスビルが市場に放出された百万石通り、そして老朽化した建造物が多くテナントが撤退している片町へ移動していることを明らかにした。これらは未利用地や建造物が宿泊施設に置換されていることに起因し、路線価の上昇も合わせて確認した。 京都市下京区菊浜の調査では、観光需要の拡大に伴う地域の変容をツーリズムジェントリフィケーションの観点で検証した。菊浜では、2010(平成22)年に旧遊郭の五条楽園の貸座敷が全て廃業となった後、置屋や町家などの不動産が流通しないまま未利用の状態であった。その後、近隣よりも不動産価格が低く、不動産の流通を疎外していた要因がなくなったことで、簡易宿所が急激に増加し、観光客向けの飲食店が増加し、路線価の上昇といったツーリズムジェントリフィケーションの兆候が生じた。そして、観光客を中心とした外部からの訪問者に向けた都市空間の再編が行われていた。また、賃料の低いアパートが簡易宿所に置き換わり、住民の立ち退きのリスクが生じていた。 城崎温泉においては、高齢化や人口減少により旅館や商店の廃業が続きながらも、インバウンド対策として補助金が活用された結果、外国人宿泊客数が急激に増加し、その結果、旅館や地域住民向けの店舗が観光客向けの店舗に置換されている状況を明らかにした。そうした店舗の中には、地域の文脈を継承していないモノが多く、地域の風情を阻害するリスクが生じていた。また、路線価の上昇など、ツーリズムジェントリフィケーションの兆候についても明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19禍ではあるが、感染対策を施した上で、石川県金沢市、京都市下京区菊浜、兵庫県豊岡市城崎温泉にて、フィールド調査を行い、ツーリズムジェントリフィケーションの兆候を検証した。また、研究成果に関しては、日本地理学会の秋季大会と春季大会、そして日本都市学会にて報告を行った。京都市下京区菊浜に関しては、日本都市学会の査読論文として採択された。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に関しては、COVID-19禍において、どれだけフィールド調査を実施できるかが鍵になる。現時点で近畿圏で三度目の緊急事態宣言が発令されようとしている中、今年度の計画を変更せざるをえないかもしれない。 フィールド調査を実施出来ない場合は、2022年度に予定している海外調査の先行研究に費やす予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19により学会での発表がオンラインによる開催へと変更になり、交通費で未使用分が生じたため。
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Research Products
(3 results)