2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K13283
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
小林 宏至 山口大学, 人文学部, 准教授 (40781315)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 現代中国 / 宗族 / オラリティ / サイバー空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代中国において電子メディアはさまざまな領域において欠かせない存在になっている。それは都市部、若年層のみならず、農村部、高齢者においてもあてはまる。このような状況の中、かつて祠堂、族譜、墓を媒体として参集し関係構築を図っていた宗族(漢族社会における父系出自集団)は、現在どのような関係性を構築・再構築しているのかを問うのが本研究のねらいである。 2020年度は新型コロナウイルスの影響で、本研究においてもっとも重要となる当該社会でのフィールドワークを行うことが不可能であった。そのため現地のコンテクストに依存したサイバー空間の利用という点を十分に調査することができなかった。2020年度は、サイバー空間のみならず、広く現地社会において人々を媒介するメディアを対象とし、これまでの現地調査で得てきた情報をもとに、民俗知識とメディア(とりわけサイバー空間)の問題を、「『伝統文化』をめぐるメディア 人類学のフィールド 中国客家社会における福建土楼を事例として」にて報告した。 現地社会において収集できる新たな史資料がないため、インターネットを介して収集しうる現地社会のデータをまとめ、現代中国社会において大規模宗族がどのような情報のやり取りをしているのかを、地域、墳墓、行事、援助、情報共有、注意喚起などの項目に分けて整理を行っている。かつてこそ祠堂や「集会所」に集まって行われていた情報交換の一端が、サイバー空間上でも行われていることが明らかとなったが、どの情報がサイバー空間で共有され、どの情報が共有されないのかということなどは、やはりフィールドにおいて時空間を共有しなければ十分なデータとは言えない。 2020年度の研究データの一端は、2021年3月、北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院主催の研究会にて口頭発表を行いフィードバックを得た。これらを踏まえて次年度の研究につなげていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は新型コロナウイルスの影響で、予定していた調査地(中国農村部)での調査を行うことができなかった。そのため、本研究が当初の予定通り十分に進んでいるとは言えない。 しかし、当該社会とは適宜連絡を取り合っており、現地を訪問せずとも得られるデータも少なくない。そのため、本年度は当該社会以外で得られる情報を中心にデータを収集し、整理を行ってきた。2021年度の状況も新型コロナウイルスの状況次第ではあるが、本研究を進めるために可能な限り現地調査を行うことを予定している。 あくまでも当初の予定通り研究は進まなかったが、その中でも有意義なデータの収集は続けられており、また書籍での事例報告、および研究会での口頭発表が行えたため本年度の評価区分を「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の進め方に関しては、当初(2019年時点)予定していたフィールドワークが難しい状況にあることは変わらないと考えられる。新型コロナウイルスの影響が軽微になったとしても今後長期でフィールドワークを行うことは困難が伴うことが予想される。 そのため、引き続きサイバー空間でのやりとりを通して、自身のフィールドの情報を集めると同時に、同じ関心をもつ現地の研究者の協力を得ながら、調査データの充実を図ることが望まれる。今後は自身の調査データと調査協力者の調査データを利用し、課題を明らかにするべく研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、国内学会への出席および調査地(中国)への渡航が行えなかったため。年度内に実地調査が行えなかったため旅費のみ次年度使用とする。
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