2022 Fiscal Year Research-status Report
フランスにおける「ジプシー」のペンテコステ派宗教実践に関する文化人類学的研究
Project/Area Number |
20K13288
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
左地 亮子 (野呂) 東洋大学, 社会学部, 准教授 (50771416)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ジプシー/ロマ / マヌーシュ / フランス / キリスト教 / ペンテコステ派 / 宗教 / 共同体主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、フランスの「ジプシー」の間で大規模な改宗が進むペンテコステ派キリスト教を例に、西欧市民社会の普遍主義とせめぎ合い、共鳴するマイノリティの宗教実践を明らかにすることを目指している。 本年度は、2年ぶりに渡仏し、調査地対象者のもとで参与観察とインタビュー調査を実施することができた。5月と9月の二度にわたり実施した現地調査では、コロナ禍でのペンテコステ派「ジプシー」の信徒集会の様子やマヌーシュ(ジプシー)共同体内部の改宗状況の推移、共同体内部における改宗者と未改宗者との関係について詳細な情報を得ることができた。本研究課題を申請した当初には予想できなかった結果であるが、「コロナ禍」という出来事を通してペンテコステ派「ジプシー」の信仰実践が多数派社会(および共同体内部の未改宗者)との間でさらなる緊張を生みだしていた様子を調査対象者から具体的に聞き取ることで、「「ジプシー」の新宗教実践は果たして本当に「フランス社会内部に民族の同一性に閉じた共同体をつくること」を志向しているのか?」という本研究の主要な問いを考察する重要な手掛かりを得ることになった点が大きな収穫である。 また本年度は、現地調査と並行して、各種学会全国大会・研究会で研究発表を行い、関係研究者と意見交換を行うこともできた。加えて、改宗を選択する女性と改宗を拒む女性という二人のマヌーシュ女性たちのライフヒストリーをフェミニスト人類学と主体論の視点から分析する査読付き論文を学術誌に掲載することで、本研究課題に関わる研究成果を発表することもできた。さらに、主題は異なるが、ホロコーストの想起をめぐるロマのトランスナショナルな運動について考察した論文、および現代ロマ・アートに関する国際シンポジウム発表では、ロマ・ペンテコステ運動の背景として注視されている「ジプシー・ナショナリズム」に関する議論をまとめることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査を予定通りに実施し、加えて、口頭での研究発表、および本研究課題に関わる学術論文発表を行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の調査で得られた新たな知見を盛り込んだ論考の組み立てを進め、エスニック・ポピュリズムの視点から捉えられてきたフランスのジプシー・ペンテコステ運動を再考するための議論を、学会全国大会で発表し、関係研究者との意見交換を行う。事情が許せば、フランスのペンテコステ派「ジプシー」の信仰実践の特徴を紹介する発表を国際学会にて行い、ペンテコステ運動に関係する海外の研究者から見解や助言を集める。 現地調査では、コロナ禍の間に中止されていたフランスの「ジプシー」のカトリック聖地巡礼とペンテコステ派の信者集会を調査し、本研究課題遂行に必要な情報を収集する予定である。 以上の研究発表と現地調査を踏まえ、本研究課題の最終成果となる論文を作成する。
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Causes of Carryover |
前年度まで続いたコロナ禍による渡航制限のため、2020年と2021年に予定していた国内外出張が中止となり、予定通りの予算執行が不可能であったため、次年度使用額が生じた。この次年度使用額と2023年度請求助成金は、2023年度に現地調査と学会発表を実施する際に使用する計画である。
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Research Products
(4 results)