2022 Fiscal Year Research-status Report
海洋生物の捕獲と養殖をめぐる文化人類学的研究:中国・台湾・フィリピンの事例から
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20K13290
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
藤川 美代子 南山大学, 人文学部, 准教授 (10749550)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アジア / 海藻 / 石花菜 / テングサ / 海女 |
Outline of Annual Research Achievements |
人は海という空間をいかに飼い馴らしてきたのか。本研究は、①海の動植物に対するドメスティケーション(栽培化・養殖化)、②海という空間の制御(自然災害予防)、③海に生きる人々の統治(国境管理・国家防衛・海洋保護)にかかわる管理システムの総体を「海を飼い馴らす技術」と名づけ、それらが自然状態としての海に含有される不確実性の克服手段として精緻化されるプロセスを追うことで、海に生きる人々が経験した近代化の一端を捉えることを目指している。 2022年度は、前年度までに日本国内で実施した海女による海藻採集と原藻の流通、寒天製造の工程にかかわる現地調査および聞き取り調査で得られたデータを整理・分析し、発表することに努めた。 また本研究開始以来、新型コロナウイルス禍下で断念していた海外調査を実施した。台湾のテングサをはじめとする海藻の採集・乾燥、原藻の流通、「洋菜」(オゴノリ系の海藻を利用した寒天)の製造、製品としての「洋菜」の流通とそれぞれの歴史について、参与観察と聞き取り調査を進めることができた。日本統治時代には基隆の魚問屋が産地の東北部各地のテングサの原藻の買取・乾燥・日本内地への移出の過程を担っていたこと、光復後には日本との取引がなくなり、一時期は台湾中西部の雲林県の寒天製造メーカーへと卸されたものの、その後はテングサはほとんどがトコロテンやとろみ飲料として台湾域内で消費されていることが了解された。台湾調査では、特に海藻の加工と加工品の流通について全体像を知るための手がかりが得られ、今後の調査・研究につながる重要なデータを収集することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料調査は順調に進んでいる。また、2022年度はこれまで新型コロナウイルス禍下において十分に実施できなかった国内外の現地調査を実施し、豊富なデータと重要な気づきを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
日本・台湾・周辺地域での現地調査を進めながら、海に生きる人々についての理解と、海での採集によって得られるテングサをはじめとする海藻をとりまく19世紀後半から現在に至るアジアの歴史を描くことができるよう努める。
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Causes of Carryover |
2020年度、2021年度は新型コロナウイルス禍のために予定していた国内・海外の現地調査の大部分が実施不可能になったために次年度使用額が生じている。2022年度に引き続き、2023年度も積極的に国内外での現地調査を実施したいと考えている。
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