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2022 Fiscal Year Research-status Report

A study on devotion and religiosity of Andean people: focus on votive offering and church documents

Research Project

Project/Area Number 20K13294
Research InstitutionNational Museum of Ethnology

Principal Investigator

八木 百合子  国立民族学博物館, グローバル現象研究部, 准教授 (80622133)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2024-03-31
Keywordsアンデス / ペルー / キリスト教 / 聖人信仰 / 奉納品 / 寄進 / 宗教性 / 物質文化
Outline of Annual Research Achievements


今年度は現地へ渡航し、ペルー南部クスコ市の教会で奉納品に関する調査を実施した。今回調査をおこなったC教会は、本研究課題の調査対象に選定した三つの教会のなかでも歴史的に古い先住民の居住区の一つとして知られ、伝統的にそうした教会周辺に居住する地元住民が教会を支える重要な存在となってきた。この教会には本尊である聖人Xのほか、これと同様に古くからこの教会に祀られてきた聖人Yに奉納された衣装類(ケープ、マントほか)が多数保管されており、現地調査では双方の聖人の奉納品のすべてを記録した。聖人Xについては57点のケープと関連するアイテム57点、聖人Yはケープ49点と関連アイテム66点を確認した。分析の結果、これらの奉納品のうち、前者は1940年代、後者は1950年代のものが現存するものとしてはもっとも古いことが判明した。また聖人Xに寄せられた奉納品にはこの聖人の持物と関わる表象が繰り返し刻まれている一方、聖人Yには寄進者の家系を表す紋章がたびたびみられ、当該教会の主聖人に対する地元有力者の影響がうかがえた。これらの情報を補完するために、双方の聖人を支える組織(兄弟会)の関係者に聞き取りを実施し、C教会の聖人崇拝の動向や祭礼に関する情報を収集した。
以上の調査で得られた情報とこれまでに調査をおこなってきた二つの教会の状況を比較することで、それぞれに歴史的背景や社会階層の異なる人びとが集まる三つの教会(A~C教会)の寄進の実態や特徴がみえてきた。特に近年は近隣の村落から市内に移住してきた人たちの影響により、寄進の質や量が変容してきている点が浮かび上がってきた。今後はこうしたなかで、寄進という宗教実践が人びとの信仰や帰属意識などさまざまな要因といかに関わっているかを考察していきたい。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason


2年にわたる海外渡航制限がようやく緩和されたことで、本年度は現地調査を二度にわたり実施することが可能になった。本研究課題の計画段階で調査を予定していた三つの教会のうち、最後の一つとなるC教会の奉納品に関する調査を完了した。調査では、奉納品の管理をおこなってきた人物や兄弟会などの教会組織のメンバーからも奉納品の詳細について聞き取りを実施した。これにより、C教会の奉納品の移り変わり、寄進者の社会背景などを把握することができた。
また、前年度までに調査を終えたA教会とB教会については収集した情報をもとに、奉納品の特徴や寄進者の傾向について分析をすすめた。その結果、両教会ではともに20世紀後半、特に1980年代以降に寄進が大きく拡大してきているが、それぞれの教会における寄進の中身や担い手が異なる様相を呈している点が掴めた。A教会の聖母には地元住民だけでなく近隣県からクスコに移住してきた人たちからの寄進が増加している一方、クスコでもっとも格式のあるB教会では、寄進者のなかに地元の有力者や政治家のほか、民間企業なども数多く名を連ねていることなどがわかってきた。
今後は、クスコ市内でもとりわけ多くの奉納品が集まるこれら三つの教会の状況から現代アンデスにみられる寄進の特徴について考察をおこなっていきたい。そのために、今回の現地調査では十分な時間を割くことができなかった各教会の財産目録など資料の収集と分析もおこなう予定である。

Strategy for Future Research Activity


次年度は、これまでの調査で収集した三つの教会の奉納品に関する情報をもとに、現代のアンデス地域でみられる寄進の実態についてさまざまな角度から分析・考察をおこなう。特に従来のように宗教的な側面だけでなく、寄進の社会的な側面にも注目しながら分析をすすめる。教会あるいは神や特定の聖人に対しておこなう物質的な贈与が、従来説かれてきたように教会との関係や宗教的な規範の上で重要な意味を持つだけでなく、当該地域における社会関係を形成するうえでも大きな意味をもつ可能性が指摘できるからである。後者の側面に注目することで、西洋キリスト教世界から導入された寄進という宗教的な実践が、アンデス社会においていかに発展してきたのかを明らかにすることが可能になると考えられる。そのために、まずは奉納品から得られる手がかりをもとに、三つの教会に保管されている奉納品の主たる寄進者をあぶりだし、その背景について詳しく調べていきたい。その際可能な範囲で、実際に寄進をした人物に聞き取り調査を実施する。そのうえで、それぞれの教会における寄進の中身や担い手の変化について教会記録等も用いながら考察をすすめていく。
なお次年度は本研究課題の最終年度にあたるため、これまでの研究成果の一部を9月に開かれる国際会議において報告し、最終成果をとりまとめたうえで論文集として刊行する予定である。

Causes of Carryover


本研究課題の開始後2年間は海外渡航制限があり現地調査ができなかったため、前半の予算執行に遅れが生じた。再調整の結果、3年目以降の調査期間を延長するとともに、最終年度にも現地で追加調査をおこなう予定である。

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Published: 2023-12-25  

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