2021 Fiscal Year Research-status Report
中国における面会交流と親子法制に関する比較法学的研究
Project/Area Number |
20K13299
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
李 妍淑 北海道大学, アイヌ・先住民研究センター, 客員研究員 (90635129)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 台湾 / 親子法制 / 面会交流 / 高葛藤 / 家族法 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の2年目にあたる本年度は、次のステップで、台湾の親子法制と面会交流(DV被害者や虐待された親子を含む)の実施状況を検討することに試みた。 まず、台湾でよく使われる国会図書館のデータベース、各省庁のホームページ及び各大学の紀要(電子データ含む)等を中心に資料収集とその検討を丁寧に行い、台湾との比較を通じて中国の親子法制が現実にどのように作用し問題解決に寄与しているかを探った。 次に、親子法制に明るい研究者や実務家、豊富な経験を有する当事者支援組織に対してオンライン上のインタビューを行い、既に台湾で実施されているソーシャルワーカーによる監督付面会交流システムの全体像及びその有効性についてある程度確認できた。このような作業を通じて、台湾における親子法制を参照し、昨年度に確認した中国の親子法制の法的状況に再び検討を加え、面会交流の実施に必要な対策を台湾の経験から得る基盤を整えた。 最後に、台湾大学や輔仁大学の先生方とオンライン研究会(とりわけ新アジア家族法三国会議)に参加し、本研究の課題について先生方と共有した上で、意見交換を行い、問題解決に繋がる重要なアドバイスを少なからず得られた。 本年度も、昨年度に続き、新型コロナウィルス感染拡大に伴い海外出張は中止せざるを得ず、当初予定していた現地での対面による意見交換や情報収集を行うことができなかった。ただ、先方とはこれまでオンライン上の交流を継続していたこともあって、難なくオンラインに切り替えることができたことは不幸中の幸いであった。とはいえ、オンライン交流は、時間に限りがあるため、焦点を絞り取材対象や内容を狭く設定されがちである。対面での交流に比べて情報に偏りがあったり、情報量が少なくなったりする傾向があるので、得られた知見は必ずしも十分なものとは言えない。この部分の不足は、来年度に極力補えるように研究体制を整えたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度も、昨年度と同様、新型コロナウィルス感染拡大に伴い海外出張の中止が余儀なくされ、現地での対面による意見交換や情報収集を行うことはほぼ不可能だった。そこでオンラインに切り替え、先方の専門家とコンタクトを取り、ミーティング(数回)や研究会(新アジア家族法三国会議)に参加したが、時間的・空間的制限により得られる情報は当初予定されたものと比べて極めて限定的なものになっている。例えば、現地調査を行い、対面による意見交換は、文献研究を補う役割を果たせるため、研究の客観性を確保する上で必要な研究方法の一つにも関わらず実現できなかった。したがって、研究の進捗状況としては、やや遅れていると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、本研究をまとめる最終年度でもある。昨年度までの研究実績を踏まえて、DVや虐待被害を受けた親と子が関わる面会交流に焦点を当て、そこに存在すると思われる法的課題と解決策を整理した上で提言し、研究成果を社会に還元する。そのために、研究は次の通りに進めていく。 まず、文献研究と成果を整理する。これまでの研究実績の整理と中国・台湾・韓国での現地調査(対面による)を終えた後、DV被害者や虐待された子が面会交流に関わる際の、親子法制の課題と解決策を論文としてまとめる。 次に、成果を発表する。「中国における「高葛藤」事案と親子法制」と題した報告を比較法学会で、「「高葛藤」事案に求められる親子法制の課題」と題した報告をジェンダー法学会で行い、本研究で得られた理論的成果が学界と実務に波及し、広く共有されるよう努める。続いて、本研究の初年度から得られた成果をまとめ、勤務先の「民法特殊講義」、「ジェンダーと法」の講義で学生に教授すると共に、市民向けの公開講座、札幌市男女共同参画センターの行事などを通じて広く社会へ発信する。 そのためには、上記の成果発表に向けた準備を進める中で、中国家族法は比較法学会の先生方に、DVや虐待が関わるジェンダー問題はジェンダー法学会の先生方に助言を仰ぎ、研究の精度を保ちつつ、奥行を広げる。また、研究成果を社会に発信する重要な機会と捉え、深刻な親子問題のためのプラットフォームを札幌弁護士会と協働し創出する。他に、面会交流に伴う「高葛藤」を念頭に、本研究を通じてソーシャルワーカーや第三者の監督義務づけなど有効な政策提言を行い、家族法改正論議に理論面から寄与する。 上記で言及した現地調査が依然として困難である場合、昨年度と同様、オンラインシステムを利用した意見交換や研究会・学会参加などを広く行うことにしたい。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大により現地調査が実現できず、2021年度も国内外の出張が不可能になったことにより次年度の使用額が生じた。これを次年度に繰越し、2022年度の交付額と合わせて研究計画にある国内外の出張のために使用する。
|