2020 Fiscal Year Research-status Report
グローバル化する政策実現過程・法執行過程における正統性確保とその原理
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20K13300
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
永石 尚也 山形大学, 大学院基盤教育機構, 講師 (20782923)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 執行統制 / 法の実現プロセス / 尊厳 / 信頼 / リスク / 法の支配 / 感染を通じた統治 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、コロナ禍のなかにおける法執行の融解現象への応答も期し、研究目的記載の2課題のうち特に①法の執行過程、即ち法形成-法執行-事後改善に至る一連の時間的幅を持つ法の実現プロセスの正統性確保の原理抽出の課題を中心に、調査・研究を進めた。 4月-7月期においては、準備作業として「法の支配」の現代的進展と法の基礎にある「尊厳」概念の変遷を辿る文献調査の期間に当てた。同時に(感染症を包含する広く)人々の生死にかんする社会的営みの国家による権力行使への包含過程についての社会学的・人類学的知見に基づき、研究成果を論文として公刊した。 8月-3月期においては、研究実施計画に基づき、コロナ禍に対しても防疫面・社会統制面での強度のコントロールを実現したシンガポールにおける調査研究に従事した。特に、接触-感染を通じた統治戦略として、シンガポールにおける植民地文化の継承・再興の状況について、上述した論文に調査研究成果を反映させている。 また同時期においては、社会科学各分野における制度的信頼の概念についても研究を付加し、新規の技術や生活様式へと適応する際における信頼(反面としてのリスク)の個人化現象について、合理的不信のメタ的デザインという軸から「尊厳」概念との接合を図った。この成果は(年度を跨いでであるが)論文として刊行される。 以上を通じて、課題①法の執行過程のなかでも事実上の社会的圧力を利用したソフトな統治戦略についての「法の支配」からの検討と、ソフトな統治戦略を支える社会的・歴史的な蓄積の分析を行うと共に、法の実現プロセスの正統性確保の原理についての端緒を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定した作業は、コロナ禍の中でも実現できた在外調査研究を含め、ほぼすべて完了したためである。 ただし、本年度の調査研究で得た知見は、コロナ禍の中での研究会の中止等の事情により、研究会における調査報告・研究報告を十分に経る機会を逸したまま論文公刊へと至っている。この点については、次年度中に研究会報告を行うことでフォローを行うこととする。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度においては、上記の課題①での成果を踏まえ、課題②法の現実(実践)における、特に実施面での統治手法の精緻化・範囲拡大の中で変容する「法」概念についての研究に注力する。特に、研究概要の記載でいえばアーキテクチャと法をめぐる議論を中心に取り上げ、データガバナンスの文脈における(自動処理からの保護を含む)「データ処理からの保護」の議論をEUのAI規則案(2021)等の動向を踏まえつつ深堀りする。これらとともに、権利保護から制度保護、さらにはプロセス保護へと至る力点の移動を下敷きにすることで、(例えば尊厳といった諸価値を漸次的-整合的に実現する)手続きを構成するものとしての「法」の概念の変容を俎上にあげる。具体的な題材としては(在外研究中においても取り上げてきた接触確認アプリを含む)プライバシー関連技術やDNA等遺伝情報を含む情報管理についての法的統制の事例を各種取り扱う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、研究開催そのものがなくなった、あるいは、移動についての制限が課されたことで、旅費の使用についての予定が変更をきたしたため。 また物品購入について、長期の在外研究を行なったために年度内の予算執行に支障をきたした。 上記のいずれについても用途の変更はなく、次年度の研究遂行のために利用することを予定している。
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Research Products
(1 results)