2022 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化時代における国家の中立性:その哲学的基盤と含意の再検討
Project/Area Number |
20K13301
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
米村 幸太郎 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (00585185)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 中立性 / リベラリズム / グローバル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
異なる善き生の構想に対して国家は中立的でなければならない。本研究は、この中立性の要請の理論的根拠を再検討し、グローバル化に伴う社会の多元化の進行 という現代的状況に対して中立性が有する含意を明らかにしようとするものである。そのために、現在のリベラリズムの諸構想の論議にも分け入りつつ、国家の中立性の要請の適切な再定式化を行う(課題1)。その上で、適切な中立性の定式化とその背後にあるリベラリズム理論に立脚し、それがグローバル化した社会において持つ含意を解明する(課題2)。これまで、リベラリズムに関する公共的理由(public reason)アプローチを批判しつつ、代替的構想としてマシュー・クレイマーやセシル・ラボルドの議論を検討した。クレイマーの議論は、まさに本研究と同一の問題関心を取り扱っているものであるが、彼の卓越的リベラリズムのヴァージョンには同意できない部分が多いことを見出した。また、ラボルドの理論枠組み(分解アプローチ)が、喫煙規制や芸術の支援のようないわゆる卓越主義的政策に対してもつ含意を検討してきた。本年度は最終年度として、これまでの研究をまとめた単著の執筆に取り組むとともに、課題2のうち、とくにグローバルな文脈における含意、とりわけ、中立性が移民政策について何を言いうるかを検討した。この論点についての先行研究として、家族呼び寄せスキームが中立性に反するとするLaura Ferracioriの議論を批判的に検討した。本研究の中で、妥当な中立性理解として提示した「分解アプローチ」の観点からすれば、家族呼び寄せについては中立性に反しないものと判断できる。中立性原理はリベラリズムの中核的要請とされるものの、移民政策のようなグローバルな文脈における含意を考察するものは少なく、その意味で、この研究には意義があると考える。
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Research Products
(1 results)