2020 Fiscal Year Research-status Report
法令の時間的適用関係に関する日仏比較を踏まえた理論的研究
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20K13309
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
齋藤 健一郎 小樽商科大学, 商学部, 准教授 (60756881)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 時際法 / 遡及効 / 時間的適用範囲 / 時間的適用関係 / 経過規定 / 経過措置 / 法と時間 / 行政法 |
Outline of Annual Research Achievements |
法令の時間的適用範囲の画定のためには、どのような分析枠組みがあり得るのかという問いの下で、初年度においては、20世紀後半以降のフランス法学説の理論的研究を行った。すなわち、条文上の要件・効果の時間的構造に依拠する客観的分析モデルについての研究である。主に、ジャック・エロンやルイ・バッハの時際法論、これらを対象とするピエール・フルーリー=ル・グロの研究を取り上げて、詳細に分析を行った。また、カナダ(ケベック)の法学者であるピエール=アンドレ・コテの研究についても分析を行った。 これらの学説が提示した、法令の時間的適用範囲に関する客観的分析モデルは、専ら、要件事実の時間的性質・時間的構造に着目するものである。こうした分析モデルの意義は、法律関係などの時間的性質(たとえば継続的な契約関係、継続的な地位)には依拠せずに、専ら、法令の条文上の要件事実の時間的解析を通じて、その法令の時間的適用範囲を明らかにしようとする点にある。この分析モデルによると、法律関係などが、いつ形成され、いつまで続き、いつ消滅するのか、あるいは形成された法律関係などが新法の影響を受けうるのか、といった時間的性質は、ときに主観的で、価値評価を伴うため、曖昧さが残る点が批判される。 もっとも、条文上の要件事実にも、複数の事実から成っている場合、時間的に離れて生じる場合があり、こうした時間間隔がある中で、途中に法改正がされたというとき、新法の時間的適用範囲はどうなるのか、その画定のためのより細かな基準・指針は何か、適用するとしてそれは遡及か否かなどの点に関しては、論者で完全に一致があるわけではない。また、フルーリー=ル・グロは、分析モデルに法的地位を含めており、他の論者とは異なる。 こうした細部の相違を明確にしつつ、初年度に取り組んだ客観的分析モデルについて、二年目も研究を継続し、論文の執筆に取り組むこととしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記したとおりであるが、初年度に予定をしていた比較法研究が順調に進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、フランス法研究を継続するとももに、日本の法令・裁判例の中から時際法の論点を取り上げて、整理・分析を行うこととしたい。 なお、日本の裁判例の分析については、初年でにおいて、泉佐野市ふるさと納税不指定事件(最判令和2年6月30日)の判例評釈を執筆・公表した。2年目も、新規または以前の重要判例の分析を行う。また、裁判例の包括的研究も行うこととしたい。 法令については、、時間的適用範囲について問題・疑義が生じていたもの(あるいは潜在的に生じ得たであろうもの)を、比較的最近の法令を中心に調査を行い、立法者はどのように検討・対処したのかを調査・分析することとしたい。
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Causes of Carryover |
主に、国内学会がオンライン開催となり、出張旅費が不要となったため残額が生じた。次年度、国内学会や海外渡航が可能となった場合には、積極的に参加や調査を行い、残額をこれに充てることとする。
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Research Products
(1 results)