2021 Fiscal Year Research-status Report
行政契約論の法理論化に向けた個別行政契約の分野横断的分析
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20K13312
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鈴木 崇弘 九州大学, 法学研究院, 准教授 (30825683)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 行政契約 / 公私協働 / 継続的事実行為 / PFI契約 / 水道事業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も引き続き行政契約に関する基礎および応用に関する考察を行った。 基礎的考察として、継続的な行政活動である「継続的事実行為」と「継続的行政契約」の同質性及び異質性について、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第29条に基づく「継続的事実行為」に対する不服審査(行政不服審査法)に関する、行政不服審査会の答申をベースに検討を行った。この検討を行う中で、(1)従来考えられてきた継続的事実行為を「行政庁の処分」と「行政上の強制」の組み合わせ類似とみる見解とは異なり、1秒ごとに「その他公権力の行使に当たる行為」が発出されていると見ることも出来ること、及び、(2)1秒ごとに「その他公権力の行使に当たる行為」が発出されていると考えることにより、違法性判断の基準時を処分時ではなく裁決時にすることが考え得ること、を明らかにした。そして、(3)(1)及び(2)から「継続的行政契約」に関する裁判上の救済を検討するための基礎を築くことが出来た。 応用的考察として、超長期的継続的行政契約である水道事業における公私協働なかでもPFI事業において最も重要なものとして位置づけられるPFI契約に関して、内閣府によって公表されているPFI契約(案)を分析し、実務的・法的において望ましいと考えられ得る契約内容の一端を明らかにした。具体的には、(1)内閣府が公表している「契約ガイドライン」は法的に見た場合どのような位置づけになっているか、(2)実際に締結されているPFI契約(案)とガイドラインとに乖離があるか、(3)乖離がある場合の原因は何か、という点に着目して具体的な検討を行った。そして、この検討からPFI契約(案)は概ね「契約ガイドライン」に則しつつ、実務上の必要性を踏まえて独自の発展を一部で遂げていること、実務上の発展は若干の疑問を覚える点もあるが、概ね妥当であると評価出来ることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究2年目となった今年度も、引き続き行政契約に関する検討、中でも行政による諸活動と行政契約の比較検討を行った。 検討を行う中で具体的な成果を出すことが出来、上述の通り継続的事実行為と継続的行政契約の比較を行うための土台を築くことが出来た。 新型コロナウイルスの流行の影響を受け、ドイツでの研究遂行など出来なかった研究プロジェクトがあったものの、全体としてはおおむね順調に推移しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度となる次年度については、新型コロナウイルスによる影響をできるだけ小さくする工夫を試みつつ、本研究課題を着実に進行させ、最終的な成果をまとめるようにしたいと考えている。
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