2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K13314
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
西上 治 神戸大学, 法学研究科, 准教授 (70609130)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 個人情報保護 / 権力分立原理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、特に個人情報保護法上の監督機関の独立性と民主的正統性の関係に焦点を合わせ、独立監督機関が有するべき組織について、(1)十分性認定の条件としてEU法はいかなる内容を求めているか、(2)それは日本国憲法が許容している内容と矛盾しないか、を問うものである。また、(2)について、本研究は、特に機能的権力分立原理の観点から国法秩序を統一的に把握し、独立監督機関の独立性と民主的正統性の調和を探求しようとするものである。 (1)については、欧州委員会による日本の十分性認定を分析し、検討すべき問題点を洗い出した。各国の十分性認定および関連する各国の法制度を調査し、第三国等に係る十分性認定の条件を具体化する作業も進めている。さらに、昨年度の「今後の研究の推進方策」で挙げたNatalia Kohtamaeki, Theorising the Legitimacy of EU Regulatory Agencies, 2019も精読を終えた。 (2)については、機能的権力分立原理の観点から行政内における権限分配および裁判所の権限を分析する内容を含むものとして、①「地方議会と司法審査」法学セミナー800号21頁を公表した。このテーマに関しては、「客観争訟における法主体の位置付けと機能」という題目で、②神戸大学公法研究会、③関西行政法研究会、④日本公法学会で報告をした。また、国法秩序における権力分立の1つの表れとして、国と地方公共団体の権限分配および両者間の争訟における裁判所の役割については、⑤「特別地方交付税の額の決定と決定取消請求訴訟の『法律上の争訟』性」ジュリスト1567号10頁、⑥「公有水面埋立法42条1項に基づく埋立ての承認と行政不服審査法7条2項にいう『固有の資格』」民商法雑誌157巻4号751頁、⑦「行政事件訴訟において『公益』を実現する法主体」法学教室498号35頁を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)「十分性認定の条件としてEU法はいかなる内容を求めているか」に関しては、令和3年度も、新型コロナウイルスの感染状況に鑑み、予定されていた現地における海外調査が実現できなかった。そのため、上記のように第三国に対する十分性認定等の分析は進めているものの、EU加盟国および第三国の個人情報保護制度の調査は十分に進捗しているとはいえない状況にある。他方、昨年度の「今後の研究の推進方策」で挙げたNatalia Kohtamaeki, Theorising the Legitimacy of EU Regulatory Agencies, 2019の精読を終えるなど、着実に進展している側面もある。 (2)「それは日本国憲法が許容している内容と矛盾しないか」に関しては、引き続き研究が進んでいる。とりわけ、専ら国内法を素材として機能的権力分立原理の分析を加えた。研究代表者の従来の研究内容である機関訴訟に重点が置かれているものの、具体的な裁判例を素材としたことで、地に足の着いた議論を展開する素地を固めることができたのではないかと思料する。 したがって、総合的には、おおむね順調に進展していると評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)「十分性認定の条件としてEU法はいかなる内容を求めているか」に関しては、今後もしばらく現地における海外調査の実現は難しそうである。そこで、令和4年度も、引き続き、令和3年度に十分にできなかったEU加盟国および第三国の個人情報保護制度の調査について、国内で入手できる文献を使って進めていく予定である。具体的には、各国(カナダ、スイス、ニュージーランド、イギリス)への十分性認定に加え、個人情報保護制度に関する欧州司法裁判所の判決(アメリカ、ドイツ、オーストリアに関する事件)を分析する。また、個人情報保護制度に限らず、EUにおける独立機関の正統性に関しても分析を加え、個人情報保護法上の独立監督機関を基礎理論的な文脈に位置づけることで見通しを良くすることを計画している。 (2)「それは日本国憲法が許容している内容と矛盾しないか」に関しては、引き続き機能的権力分立原理の内容の解明および具体化を進める。研究代表者の従来の研究である機関訴訟を具体的な素材とした検討は、令和3年度に十分に行うことができた。令和4年度は、そこから一般理論へと展開することを試みる予定である。
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Causes of Carryover |
過去2年間は、新型コロナウイルスの感染状況を理由として、予定されていた海外出張が実施できなかったため、次年度使用額が生じた。今後も不透明な状況にあるが、可能であれば海外出張を実施し、予定通りに助成金を使用したい。
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Research Products
(8 results)