2023 Fiscal Year Annual Research Report
プル型の行政調査の法的統制:プッシュ型の調査との比較
Project/Area Number |
20K13315
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
中尾 祐人 同志社大学, 政策学部, 准教授 (00825771)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 行政法 / 行政調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究期間において、プル型の行政調査である米国のsubpoena(召喚状)をめぐる判例・学説を検討し、プッシュ型の行政調査に対する統制法理との比較を行った。米国におけるSubpoena に対する法的統制は,刑事捜査に対する法的統制,プッシュ型の行政調査に対する法的統制に比して,わずかな制約のみを課しているところ、その理論的基礎を明らかにした。具体的には、subpoena は①大陪審の調査権限に歴史的に由来しており、プッシュ型の行政調査とは歴史的背景が異なること、②生じているプライバシー侵害の程度が軽微であること等である。このうち特に後者の議論については我が国にも有益な示唆を与えるものであった。 最終年度においては、日本の行政調査の実態について弁護士等の行政調査に関わる実務家にヒアリングを行い、我が国の行政調査が現実に抱えている問題点を明らかにした。具体的には、調査の実施に当たる行政機関ごとに調査実施の際の制約の程度やその取り扱いには大きな差異があること、プッシュ型の調査とプル型の調査が渾然一体となって行われている場合があること、それぞれに対する法的制約は統一的なものとしては存在していないこと、違法な調査を争う方法が明確でないことなどである。その上で、米国におけるプッシュ型の行政調査に対する制約法理の基礎理論を参考にすることで、日本の行政調査に対して適用されるべき統制法理について検討を行った。
|