2022 Fiscal Year Research-status Report
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20K13318
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 晶国 九州大学, 法学研究院, 准教授 (50782950)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 内国歳入法典7491条 / 証拠の優越 / 立証責任の転換 / 信用できる証拠 / IRS再編改革法 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、1998年にIRS再編改革法の一環として導入された立証責任を転換する規定である内国歳入法典7491条についての制定後の動向についての調査を行った。本規定の立法趣旨は、課税庁と納税者の不公平の解消とされているが、本規定による立証責任の転換のためには、立証のための法典が定める要件の遵守や、納税者による記録の保存、調査への協力など厳格な限定が付されている。制定初期において、納税者が本規定の適用を主張したHigbee v. Commissioner, 116 T.C. 438 (2001)では、本規定は法典・規則に基づく所定の項目に関する立証の要件を上書きするものではないことが確認されており、納税者は制定以前と同様に法的に設けられた要件を立証する必要があることが指摘された。また、その適用においても、「信用できる証拠」の解釈についていくつかの裁判例が存在している。そのほか、裁判例には、本条項は証拠の優越が認められないような証明力が同程度な事例においてのみ意味を持つことを示唆するものもあった(Knudsen v. Commissioner, 131 T.C. 185 (2008), Schank v. Commissioner, T.C. Memo.2015-235)。このようなことから、制定後現在までにおいて、7491条によって納税者が有利となったような事例はほとんど見当たらず、本規定による立証責任の転換が効果を発揮する可能性は低いとの指摘も存在している(See, Richard Molina & Bruce W. McClain, Has the Shift in Burden of Proof Really Helped Taxpayers in Litigation?, TAX NOTES SPECIAL REPORTS (Feb. 20, 2023))。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、米国における税務訴訟に関して、立証責任を転換する規定である7491条の効果とその限界について、米国法における立証責任論の特徴を踏まえた帰結を調査した。本研究課題においては、推計課税の理論的根拠として、証明妨害による立証責任の転換という着想を提示しているが、米国法における税務訴訟の立証責任の動向と我が国の動向を比較することが可能となり、最終年度に向けて、おおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については、法律論としての立証責任の差異とその動向だけでなく、実際にいかなる立証がなされており、その立証に基づく推認を裁判所としてどのように判断しているかという観点について、より詳細な調査を進めて行く予定である。また、これまでの研究成果をまとめる作業も引き続き行う予定である。
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Causes of Carryover |
コロナの影響等で旅費が少額となったので余裕が生じたが、次年度以降に書籍購入などに利用していく予定である。
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