2020 Fiscal Year Research-status Report
Medical profession from viewpoint of Public law : their deontologocal responsability in public health
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20K13325
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
河嶋 春菜 帝京大学, 法学部, 助教 (10761645)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 公衆衛生 / 新型コロナウイルス感染症 / 職業倫理 / 医療プロフェッション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、フランス法との比較において、医師の公衆衛生の実施における機能を具体的に理解し、医師職の憲法上の位置づけを明らかにすることによって、医師の公衆衛生上の公共的職責と、医師が職業選択および営業についてうける特別な規制および特権との連関を構造的に理解することを目的とする。 2020年度は比較的視点および分析軸を得るため、フランスの感染症対策法制の調査および感染症対策における医師の法的位置づけに関する調査を行った。新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、本研究課題に関連する研究が数多く出版されたため、それらのフォローに多くの時間を費やした。 本年度の具体的な研究実績として、例えば、河嶋春菜「フランスー新たな法律上の緊急事態の創設」大林啓吾編著『コロナの憲法学』(弘文堂、2021年)、同「憲法における公衆衛生・健康・身体―フランスにおける予防接種義務制度を素材に」同志社法学414I(2020年)等を公表した。また、日本医事法学会において、「感染症の危機における人権保障」と題する研究報告を行った(2020年11月21日、於慶應義塾大学・オンライン)。また、フランスで実施されたウェブシンポジウムや講演会に複数参加し最新の知見を得た。その成果は公表論文・報告等に反映した。 フランスでは、公衆衛生法典に医師の職業倫理が規定され、ここに医師が公衆衛生の向上に協力すべき職責や、その尊重が強制加入団体である医師会による懲戒処分制度および最上級審としてのコンセイユ・デタによる統制に服することが定められている。新型コロナウイルス感染症対策や予防接種制度においても、このような一般法上の枠組みと新たに創設された「衛生緊急事態」等の枠組みの中で、医師の行為義務の賦課や職務範囲の拡大が行われていることが分かった。来年度はこれを体系的に理解するとともに、日本との比較を行いたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、感染症対策法制および感染症対策実務に無視できないうごきがあり、公衆衛生に関する公法学研究の成果が多く出版されたため、それらから新しい知見を得ることができた。また、フランス憲法における公衆衛生概念について理解を深めることができた。一方で、同じ社会的背景を理由に、本研究課題を探求する前提として日本とフランスにおける感染症対策法制の改正等を検討し、課題の洗い直しおよび精緻化を行う必要が生じた。そのため、医師プロフェッションの憲法上の位置づけそのものの検討について、論文の形式で成果を出すに至らなかった。以上の理由から、研究は全体として「やや遅れいている」。 2021年度は、医師プロフェッションの職責に関して職業選択の自由の観点から検討することに力を入れたい。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、日本およびフランスにおける医師の職業倫理および職業選択の自由に関する医事法学および憲法学の先行研究を調査し、比較検討する。感染症対策法制における医師の位置づけや国の公衆衛生政策に反対する医師に対する法的統制を素材にして、フランス固有の健康保護/公衆衛生概念の観点から医師プロフェッションの職責の特徴を明らかにし、日本への示唆を導く必要がある。また、本研究課題に関連する範囲で日本国憲法における職責について、神職、弁護士職、教育職等に関する先行研究から学ぶことを目指す。2021年度は、以上を同時並行ですすめる予定である。 2020年度の成果は、学会誌等で公表する(『憲法理論研究』、『国際人権』を予定)。また、2021年度の研究成果は学会および研究会での報告を行うことによって、批判的検討を重ねる(「日本法哲学学会学術大会」、フランスで行われる国際研究集会を予定)。なお、2020年度にインタビューを実施する予定であったフランス医師会会員の都合があえば、オンラインでインタビューを実施する。
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Causes of Carryover |
2020年度はフランスに渡航して調査を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症の拡大により渡航を中止したため、旅費および研究協力者への謝金として使用する予定であった助成金を外国語文献の購入に充てた。そのため細かな支出が多くなった結果、若干の次年度繰越が生じてしまった。 2021年度は、邦語文献の購入および研究成果の発表のために助成金を使用する予定である。
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Research Products
(11 results)