2020 Fiscal Year Research-status Report
国際法学説史における自然法論の再検討――近代国際法完成期及び戦間期を中心に
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20K13332
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
小栗 寛史 岡山大学, 社会文化科学研究科, 講師 (80837419)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国際法史 / 自然法 / 国家意思 / 合意 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、研究対象となる時期を【Ⅰ】近代国際法完成期(1776~1914年)、【Ⅱ】戦間期(1915~1945年)に分類し、それぞれの時期における自然国際法論の代表的著作の検討を通して自然国際法論の展開史を解明し、【Ⅲ】両者の関係を整理した上で、同時代における一般法史学における「自然法の再生」との比較検討を行うことで、自然法論に関する国際法史研究と一般法史学研究との接合を目指すものである。 初年度である令和2年度は上記【Ⅰ】の時期、即ち「近代国際法完成期における自然国際法論」として1776~1914年の著作を中心に分析を試みた。近代国際法が自然法論と不可分の一体のものとして構想されてきたことについては学説上の異論はなく、特に近代国際法成立期の自然国際法論については国内外の多くの先行研究の蓄積がある。これに対して、本研究課題が主たる対象とする近代国際法の完成期については、実証主義の時代として従来理解されてきたため、そこにおける自然国際法論の内容とその展開過程については十分に論じられてきてはいない。そのため、まずはこの時期に上梓された文献の中で、自然国際法論を採用するものを同定し、それらの内容を精査する必要がある。 このような作業の結果、従来の研究における評価とは異なり、1914年に至るまで自然国際法が決して凋落したわけではなかったことを明らかにした。さらには従来散逸して纏められてこなかった関連文献をリスト化し、それらの主たる傾向を見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの影響で、当初予定していた海外での史料調査や研究成果公表が実施できなくなったため。
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Strategy for Future Research Activity |
第一次世界大戦後の新たな国際法思想の潮流の一つとして、自然国際法論が「再生」したという指摘が国内の先行研究においてなされてきたことに鑑み、戦間期という時代にどのような自然国際法論が提唱されたのかという点を解明する。とりわけ、第一次世界大戦後のドイツにおいて設立され、カトリック法学者によって構成された「キリスト教国際法のための委員会」の議論の成果物として刊行された叢書を中心に検討を進める予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響で、当初の予定に変更が生じたため次年度使用額が生じている。感染状況次第ではあるが、渡航が可能になった場合には速やかに史料調査等を行う予定である。
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Research Products
(1 results)