2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K13333
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Research Institution | Takushoku University |
Principal Investigator |
土屋 志穂 拓殖大学, 政経学部, 准教授 (00551615)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国際法上の個人の権利 / 外交的保護 / 国際司法裁判所と人権 |
Outline of Annual Research Achievements |
個人の権利、とりわけ人種差別撤廃条約が国際司法裁判所で紛争の主題とされたケースを中心に分析を試みている。国際司法裁判所は国家間の国際紛争を解決するための主たる裁判所として人権条約に関する紛争を多く取り扱うようになっている。今回の分析では、①他の人権条約機関および地域的な人権裁判所で判断された実行が慎重に取り入れられつつあること、②人権条約の解釈・適用の問題として、これまでの個人損害に対する判断同様、個人の権利侵害を国家の条約義務違反として認定する基準としてその特殊性を区別せずに用いていること、③②の場合には、条約上の権利の解釈を国際法の解釈原則に基づいて厳密に行っていることが明らかになった。国際司法裁判所は、「個人の権利と国家の権利が相互依存の状態」(Avena事件、2004年)という立場から、個人が条約で権利を認められていることは、国籍国にとっても国民の保護の権利を有するということであるが、この権利状態は人権においても認められているということである。しかし、この国籍国の権利は、国籍国が外交的保護権として行使できる権利であっても伝統的な国際法が認めてきたような実体的な権利とまでは言えないのではないかと考える。 だが、人権条約も広く個人の権利を定める国際法として、裁判においては他の個人の権利を定める条約と区別がないようにも見える。人権条約がその他の個人の権利を定める条約と比較して、特殊性を持っていてそれが国際司法裁判所の判断にいかなる影響を与えるかについては検討が不十分である。上記の①の他の人権条約体・人権裁判所の判断が、国際法の一部として国際司法裁判所によって取り入れられることにより、国家の人権条約義務違反を構成する証拠として用いられて入るが、それが人権条約の特殊性によるものか否かは明らかでない。したがって、この点は今後も引き続き検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVIDの理由で初年度に参加する予定でいたドイツでのシンポジウムに参加できず、海外での資料収集などが十分でなかったこと、人種差別撤廃条約に関連する判決の言い渡しが2021年になったことなどから、2020年度内に提出予定の論稿を半年遅らせた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に行う予定であった「国際司法裁判所の個人の権利に関連する判決及び勧告的意見の分析によって国際司法裁判所が個人の権利侵害とその帰結としての救済をどのように与えているかを分析すること」を次年度も継続する。その後、「国際司法裁判所以外の国家間紛争手続において個人の権利救済がどのように理論整理されているのかを明らかにすること」というテーマに移るが、両方のテーマがオーバーラップすることを否定しない。
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Causes of Carryover |
主に費用を書籍購入に充てていたが、海外からの書籍が予定通りに届かなかったため、残額が発生してしまった。次年度に充当していただき、続けて書籍購入に用いる予定である。
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