2021 Fiscal Year Research-status Report
Controversies in Legal Theory on Korea Question by International Law Scholar in Postwar Japan
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20K13334
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
鄭 祐宗 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 准教授 (50760055)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国際法 / 国際政治史 / 朝鮮問題 / 国家政策の手段としての戦争 / 国際警察行為 |
Outline of Annual Research Achievements |
戦後日本の国際法学者は朝鮮問題に対していかなる前提にたち、いかなる角度から議論し、いかなる問いに取り組んだのか。2021年度に本研究は、上記の問いに対して、法実証主義の角度と法実証主義を超えた角度の二段の構えから迫り、1950年代日本における国際法学者による朝鮮戦争認識に照準した結果、1)入江啓四郎による南北朝鮮の内乱と米統合軍による干渉としての枠組み、2)横田喜三郎による南北朝鮮の国家間戦争とそれに対する国際警察行為の発動としての枠組み、3)山手治之による派兵諸国の国連憲章違反と違法性阻却不可の枠組みの三者を把握するとともに、入江と横田の枠組みを法実証主義の共通土俵において把握し、その論争的契機を横田の枠組みと山手の枠組みに見出すこととなった。そのうえで、横田による国際警察行為発動論(制裁戦争論)が、山手による国際警察行為不成立論(国家政策の手段としての戦争論)によって、実証的反駁にさらされたこと、さらには山手による国際警察行為不成立の論証が、国連憲章の諸規定に関わる実定国際法論に立脚し、かつ差別戦争概念の構造分析を見据えて実践されたこと、そしてその両者の角度を確保することによって、横田の議論における実定国際法解釈としての無効性及び制裁戦争論議の危険性を説いたものと位置づけた。本研究は、反法実証主義の系譜に照準した戦間期国際法思想史についての先行研究に触発され、かつこれを戦後の国際法思想史研究において実践、展開することが企図されており、同時に実定国際法研究の面からは、現代国際法が国連を通じた集団安全保障を前提としていること、実際にその例外規定と欠陥をいかなるものとするかによって、朝鮮問題に対する認識枠組みが異ならざるを得ないことを把握する点において、法学的朝鮮戦争基礎研究と国際法思想史研究との接合を試みるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は入江啓四郎と横田喜三郎の二者に焦点をあてる予定であったが、2020年度以来、上記に述べた新たな系譜を可視化したことにより、問題状況を立体的に提示する方途が見出された。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に得られた知見を確保しつつ、2022年度においては、1950年代中葉における三つの国際法・国際機構法研究の潮流に照準したい。第一は、横田喜三郎と尾高朝雄の両氏がカーネギー国際平和財団の依頼を受け1953年2月に始めた「国際機構とくに国際連合に対する日本の国策と世論の調査」とこれに結集した国際法学者らによる委託研究の成果物“Report on the National Policy and Public Attitude of Japan toward International Organizations especially the United Nations”, prepared by International Law Association of Japan, Tokyo, April 30, 1954.である(同委託研究の成果の一部を翻訳収録した著作物として横田喜三郎・尾高朝雄『国際連合と日本』(有斐閣、1956年)がある)。第二は前者の委託研究に参画しなかった田畑茂二郎とその田畑による体系書『国際法 上・下巻』(有信堂、1954年-1955年)が提示した普遍主義的な戦争違法化パラダイムの意義である。第三に、前二者を批判した当該時期における山手による研究実践(『立命館法学』掲載の「憲法第九条と国際警察軍」(1954年)及び「田畑茂二郎「国際法 下巻」」(1955年))の地歩を検討し、その再定位を試みたい。
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Research Products
(1 results)