2021 Fiscal Year Research-status Report
傷病労働者の適正処遇実現にむけた労使対話システムの構築
Project/Area Number |
20K13340
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鈴木 俊晴 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (50757515)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コロナ禍 / テレワーク / 使用者の健康管理義務 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、傷病労働者の適正処遇に向けた労使対話システムを考察するために、フランスに赴きインタビュー調査を予定していた。しかし、感染拡大により、渡航が事実上不可能な状況が1年間にわたり続いた。 そこで、本年度は国内において、コロナ禍による労働者の労働形態の変化が、労働者の健康管理にどのような影響を及ぼし、またそれにより労働者の健康管理に関する使用者の法的義務にどのような変化を生じさせるか、考察を行った。 とりわけ、コロナ禍ではテレワークが多くなることから、労働者の自宅など使用者の監視が行き届かない空間において、どのように健康管理を行うかが重要である。政府は2021年にテレワークガイドラインを改定して「自宅等においてテレワークを行う際の作業環境を確認するためのチェックリスト(労働者用)」を活用すること等により、自宅等の作業環境に関する状況の報告を求めること、及び必要な場合には、労使が協力して改善を図ることや、自宅以外の場所(サテライトオフィス等)の活用を検討することが重要である旨規定している。これは、労働者の私的領域を尊重しつつ、作業環境管理にかかる労使対話の活性化を図るものと言える。また、テレワークは上司等が労働者の心身の変調に気づきにくいという特質があることから、政府は新たに「テレワークを行う労働者の安全衛生を確保するためのチェックリスト(事業者用)」を策定し、この活用やこれを通じた健康相談体制の整備やコミュニケーションの活性化を促している。衛生委員会の調査審議の場や労働安全衛生マネジメントシステムの活用による自主的なリスクアセスメントの実施が求められている。以上のように、労働者の監視が行き届かないテレワーク下においては、労使対話による間接的な管理と、安全管理の仕組み化を適切に行っているかが、使用者の義務として強調される傾向にあることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究課題の初年度よりコロナ禍に見舞われ、本研究の主要調査方法である海外実態調査が事実上不可能な状況が続いているため。
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Strategy for Future Research Activity |
海外渡航調査が支障なく行える状態となれば速やかに実施する。実施が困難な状況が続けば、文献による調査のみとはなるが、できる限り実態が明らかとなるように分析を進めたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で海外渡航が事実上不可能となり、旅費、人件費(通訳代)、その他必要な物品費を支出することができなかったため。
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