2021 Fiscal Year Research-status Report
多様化する職業性リスクと労働者の健康・安全に関する日仏比較研究
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20K13341
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Research Institution | Kyushu International University |
Principal Investigator |
阿部 理香 九州国際大学, 法学部, 助教 (20829460)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 労働法 / 労働安全衛生法 / フランス |
Outline of Annual Research Achievements |
フランス労働法典は、労務遂行の過程で生じる「生命または健康に重大かつ差迫った危険」に直面した労働者に対し、自らの判断で労働を中断し、危険を回避することを認めている(以下、「警告・退避権(droit d’alerte et de retrait)」とする)。これら労働法典上の権利に対応する法概念は日本法にはないが、「いかなる場合(いかなる危険)」に就労を拒否することができるのか、その場合の権利義務関係はどうなっているのか等を検討することは、メンタルヘルスや自然災害、感染症など労働リスクが多様化する今日において、日本法に対しても何か有益な示唆が得られるのではないか、本研究は以上のような問題関心のもと行っているものである。 2021年度に実施したのは主に以下の2点である。1つは、警告・退避権の行使の適法性が争われた判例・裁判例の分析である。1982年にこの権利がフランスで導入されてから40年が経過しており、判例の蓄積も一定程度みられるところ、2021年度は下級審も含めた判例の洗い出しを行い、新たに分析する判例を追加した。また、以前に検討したことのある判例についても改めて分析した。もう1つは、新型コロナウイルス感染症をめぐるフランスの取組みである。2021年8月5日の健康危機管理に関する法律では、医療施設や高齢者・障害者の宿泊施設等、特定の場所で就労する労働者に対して、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が義務づけられ、使用者がこれを管理する義務を負うこととなった。2021年度の後半は、これをめぐる問題、とくに労働者のワクチン接種拒否をめぐる議論について調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
判例の分析・検討を一定程度進めることができたため。また、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の義務をめぐる議論についての調査も、まだ不十分であるが進めることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症にかかる研究成果の一部について公表の準備を進める。その他については、さらに継続して研究を深める。
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Causes of Carryover |
フランスDalloz社の学術論文データベースの年間利用料の金額が初回割引きが適用されなくなった関係で変更となり、データベース契約を優先して予算執行を行い、残りを書籍等の購入で調整をしたところ、若干の繰り越しが発生した。
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