2023 Fiscal Year Research-status Report
多様化する職業性リスクと労働者の健康・安全に関する日仏比較研究
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20K13341
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Research Institution | Kyushu International University |
Principal Investigator |
阿部 理香 九州国際大学, 法学部, 助教 (20829460)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 労働法 / 労働安全衛生法 / フランス |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国の労働安全衛生法は、「職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的と」している(1条)。この目的を達成するため、同法は、事業者に多様な義務を罰則付きで課しており、これによって職場の安全衛生を実現しようとしている。これに対し、フランス労働法典は、使用者に安全衛生上の義務を課すだけでなく、労働者にも一定の権利を付与すると共に、使用者への協力義務を課すことにより、職場の安全衛生確保を目指している点に大きな特徴がある。 本研究課題は、フランス労働法典がすべての労働者に付与している権利のうち、L.4131-1条に定める警告・退避権を検討対象に取り上げる。同条によると、すべての労働者は、重大かつ急迫の危険を示すと考える合理的理由のある労働状況について、使用者に警告し、そこから退避することができる。この権利の内容と構造を明らかにする。 2022年度までは、同条を根拠に労働者が退避権を行使し、その適法性が争われた裁判例の整理を行ってきた。2023年度は、フランス警告・退避権の趣旨・目的を明らかにするため、立法経緯の調査を進めた。フランス警告・退避権は、労働法典で認められた権利であり、これらがフランス国内法で定着するまでに、ILO条約の制定経緯の議論と、EU法の果たした役割が決定的であると考えられるからである。以上の研究の成果をまとめ、2024年夏頃に論文を公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
立法経緯の調査など、一定程度、研究を進めることができたが、目標としていた論文の公表には至らなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の成果を論文にまとめ、研究会での報告および公表をする。
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Causes of Carryover |
研究の進捗がやや遅れていることから、次年度における研究会報告のための旅費や書籍等の購入にあてるため、繰り越しが発生した。
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