2020 Fiscal Year Research-status Report
Researches on the Incentive Structure regarding Corporate Crime
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20K13346
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
深水 大輔 信州大学, 先鋭領域融合研究群社会基盤研究所, 特任准教授 (10865025)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 企業犯罪 / インセンティブ / コンプライアンス / アジャイル・ガバナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
企業犯罪へのアプローチとして企業自らの不正の予防活動・摘発活動を促すインセンティブ構造(Incentive Structure)の構築を図る観点から、米国司法省のDaniel Kahn氏、元米国司法省DAGであるMark Filip氏、企業犯罪研究の第一人者であるJennifer Arlen教授、英国の重大不正捜査局(Serious Fraud Office)の長であったDavid Green氏らを招聘したワークショップを開催した(https://aretework.com/wp-content/uploads/2020/09/Flyer-White-Collar-Crime-Workshop-2020.pdf)(https://www.noandt.com/en/seminars/2020/documents/20201120_02.pdf)。 また、企業訴追の諸原則およびそれに関連する諸制度を研究し、金融法務事情における連載の形で取り纏めた(金融法務事情連載「企業不祥事・企業犯罪をめぐる諸問題」全10回。米国司法省のアプローチについては、特に第7回と第8回参照)。インセンティブ構造に関する最近の議論を反映した米国FCPAのガイドライン改定についても研究し、その概要や意義について商事法務の論文として取り纏めた(「FCPAリソースガイドの改訂を踏まえたコンプライアンス・プログラムの整備」商事法務2446号37頁)。 さらに、経産省Society5.0における新たなガバナンスモデル検討会の委員に就任し、「Governance Innovation Ver.2:アジャイル・ガバナンスのデザインと実装に向けて」と題する報告書を取り纏めた(https://www.meti.go.jp/press/2020/02/20210219003/20210219003.html)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度においては、米国における企業犯罪へのアプローチとしてのインセンティブ構造や司法取引の交渉ストラクチャーを分析することを予定していた。この点、米国の実務家や第一線の研究者との議論や、近年の文献の検討、具体的な国際的な調査案件への関与を通じて、概ね予定通り研究を進めることができた。 いわゆるコロナ禍の影響により、積極的に海外を訪問しての研究が制限された点は残念であったものの、ビデオ会議システム等を活用することにより、海外の実務家、研究者とも相応のコミュニケーションをとることができた。 さらに、経産省の「Governance Innovation Ver.2:アジャイル・ガバナンスのデザインと実装に向けて」において、技術革新に伴う社会の変化を日本におけるガバナンスモデルの転換の必要性を取り纏めた白書として公表できたことは、研究成果の一つとして大きな一歩であると考えている。この白書においては、共同規制やアジャイル・ガバナンスといったコンセプトのもと、企業が積極的にガバナンスに参加するインセンティブ構造を設計することの重要性や、そのための具体的な方策を大きな方向性として示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度においては、刑法学会の分科会において、我が国の協議合意制度(いわゆる日本版司法取引)について実務的観点からの報告を行うとともに、同学会のワークショップにおいて、インセンティブ構造を構成する諸制度の一つである弁護士依頼者間秘匿特権について報告を行う予定である。 また、令和2年度と同様、米国司法省の担当者、米国や英国の研究者、企業犯罪(White Collar Crime)を扱う実務家等を招聘したワークショップを開催することを予定しており、そこでは、近年の国際的な企業犯罪対応のトレンドに加えて、企業のコンプライアンス・プログラムの有効性評価や、国際的な不正調査を行う際の労働法、データプライバシー法制上の諸問題、AI等のテクノロジーを利用したコンプライアンス体制の整備等を取り上げる予定である。
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Causes of Carryover |
当初計画で見込んだよりも安価に研究が進んだため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は令和3年度請求額と合わせて書籍の購入や消耗品費として使用する予定である。
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Research Products
(9 results)