2020 Fiscal Year Research-status Report
違法逮捕に引き続く身体拘束の可否―実務と理論の架橋を目指して
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20K13347
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
小浦 美保 岡山大学, 法務研究科, 准教授 (80547282)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 逮捕・勾留 / 違法逮捕 / 逮捕前置主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
捜査実務において、身体拘束という手法の必要性は今なお決して小さいものではない。他方、いうまでもなく、身体拘束は身体の自由を侵害する強力な処分であり、適法に実施することが望まれる。本研究は、(ⅰ)違法な逮捕は後の身体拘束の継続にいかなる影響を及ぼすのか、(ⅱ)違法の程度によっては身体拘束の継続が許される場合があるとするならば、その違法の程度の評価はどのような指標に基づいてなされるかという点について明らかにしようとするものである。身体拘束をめぐる先鋭な対立は実務の中にあり、この問題については実務の運用を前提とした議論が従来なされてきた。本研究では、実務の蓄積と知見を十分に踏まえつつ、上記の問題に関する理論的検討を深め、実務と理論の架橋を目指すものである。 2020年度は、まず、裁判例等において、逮捕につきいかなる違法な手続が問題とされてきたのか、分析を行った。そして、これを踏まえ、上記(ⅰ)の点につき、従来の見解を精査した。これまで、逮捕の違法が勾留請求に影響を及ぼすこととの関係については、逮捕前置主義にその根拠を求める見解や、法形式にその根拠を求める見解などが示されてきた。前者については、逮捕前置主義そのものの理解についてまず対立があり、適法な逮捕が先行することまで要請されると理解したとしても、その根拠は必ずしも明らかにされてこなかった。また、後者については、準抗告などの不服申立制度を持たない逮捕という手続に対しては、勾留請求の段階で審査をするとの理解が示されているところ、その審査の対象はいったい何なのかという点は、十分に議論されてこなかった。そこでまずは、逮捕前置主義の意義について、先行研究を精査し、再定義する試みを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、違法な逮捕が後の身体拘束の継続にいかなる影響を及ぼすのかを研究した。これまでの裁判例を精査し、具体的な逮捕の違法の場面を把握し、また、先行研究を概観しつつ違法逮捕と勾留との理論的関係を探ることで、逮捕前置主義に関する試論を示すことができた。 概ね当初の計画通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度にたどり着いた試論を前提とすると、当初計画よりも少々検討対象が広がった部分がある。また、上記試論との関係では、当初予定していた違法の程度の評価に関する検討は優先度としては劣後することとなった。 2021年度は、試論との関係で優先度の高い、違法逮捕後の勾留却下に続き、再逮捕が行われる場面について分析し、起訴前身体拘束全体を通じて、違法逮捕が及ぼす影響を検討していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症対策のため、出席を予定していた研究会等が軒並み延期・中止またはオンライン開催となった。それにより、旅費として予定していた金額を使用することがなかった。 オンライン研究会に備え、翌年度分に繰り越したものは通信機器等に充当し、また延期となっていた研究会への参加が可能であれば、参加対象を拡充し、旅費に充当したい。
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