2020 Fiscal Year Research-status Report
裁判員裁判を踏まえた相互闘争状況における正当防衛の判断基準の研究
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20K13351
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Research Institution | Chuogakuin University |
Principal Investigator |
木崎 峻輔 中央学院大学, 法学部, 講師 (70754076)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 正当防衛 / 正当防衛状況 / 侵害の急迫性 / 相互闘争状況 / ドイツ判例 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、研究実績として、中央学院大学法学部の紀要である、中央学院大学法学論叢に34巻2号に、判例研究「相互闘争状況において正当防衛権の制限を否定した事例―BGH, Bechuluss von 26. Juni 2018 - 1 StR 208/18―を掲載した。 同判例研究は、研究課題である相互闘争状況における正当防衛に関する近時のわが国の重要判例である平成29年決定と類似した事実関係のドイツ連邦裁判所の判例をわが国に紹介した上で、その判断の内実を明らかにした上で、わが国の平成29年決定と比較することで、わが国の裁判実務において相互闘争状況における正当防衛の事案に際してなされる価値判断の特質を明らかにすることを試みたものである。 本判例研究の対象としたドイツ連邦裁判所の判例は、事実関係がわが国の平成29年決定と非常に類似したものであるにもかかわらず、その結論が正反対のものであるという点に大きな特徴が存在する。このように、ドイツ連邦裁判所の判例が事案の性質が類似したものであるにもかかわらず、なぜわが国の判例と正反対の結論に至ったかを検討することは、わが国の裁判実務においては、どのような価値判断に基づいて正当防衛の成否についての結論が出されているかを明らかにすることに結びつく研究であるということができる。そして、本業績は、単にドイツ判例をわが国に紹介するものにとどまらず、この点に関する一応の見解を提示するものであり、そのような意味において、本業績は、判例研究ではあるが、本研究課題を今後進める上で非常に重要なものであるということができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究の進展状況としては、特にドイツ文献を読み込んで分析する点に進展があった。わが国の刑法の母法はドイツ法であり、正当防衛の解釈論もドイツ法の影響を大きく受けている以上、本研究課題を進める上では、ドイツ刑法の文献の調査は重要な要素となる。本年度は、ドイツ刑法に関する文献や判例を読み込んだうえで、ドイツ判例に関する業績を大学の紀要に掲載することができたので、その点で概ね順調に進展していると評価できる状況にあった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、本年度に引き続いて、ドイツ刑法の文献に関する調査を中心に進める予定である。予定としては、ドイツの学説を検討した上で、正当防衛の正当化根拠に関する論文を掲載することを予定している。
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Causes of Carryover |
購入時に代金と合わせて支払った海外から購入した書籍の輸入手数料が戻ってきてしまい、次年度使用額が発生してしまった。
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Research Products
(1 results)