2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K13366
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 陽一 京都大学, 法学研究科, 准教授 (10737399)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 課徴金 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度である本年度に行った研究内容は、以下の3点である。第1に、アメリカ証券取引法(特に民事制裁金制度)についての基礎的な文献を収集し、分析・検討を行った。第2に、金融庁が公表している課徴金事例を整理・分析して、その傾向や問題点を分析・検討した。第3に、オリンパス事件の一連の裁判例を素材として、法人に対する課徴金について役員等が損害賠償責任を負うことの当否について考察を行った。その成果は次のとおりである。オリンパス事件をめぐる一連の裁判例の立場を統一的に理解するならば、会社が支払った罰金・課徴金について、役員に対して損害賠償請求することは可能であるが、幇助犯として処罰されることが見込まれる第三者に対して損害賠償請求することはできないというものになる。しかし、当該区別の合理性には疑問もあり、各判決の挙げる理由には矛盾点もあることから、なおも検討が必要である。法人に科された罰金について自然人に損害賠償請求を認めるかどうかを考えるに当たっては、法人処罰の目的や想定されている抑止メカニズムが重要になる。現在の法人処罰制度はこれらの点が必ずしも明確でない。課徴金についても、その性質や法人に課した場合の抑止メカニズムが必ずしも明らかでないことが、見解の相違につながっているといえる。根本的には、法人の利益や損失の実質的な帰属者である株主等の利害関係やインセンティブも考慮に入れて、法人に対する罰金刑や課徴金の意義を再検討した上で、損害賠償請求の可否や範囲等について、立法により解決することが望ましいと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおり、アメリカの民事制裁金制度の基礎的な分析と、金融商品取引法上の課徴金事例の整理・分析ができたほか、オリンパス事件の一連の裁判例を素材として、一定の考察を行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度・2022年度は、①他の法律における課徴金制度の分析、および②アメリカの民事制裁金制度に関するより深い考察を行う予定である。
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