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2020 Fiscal Year Research-status Report

継続的契約の終了に関する基礎的研究

Research Project

Project/Area Number 20K13368
Research InstitutionKyoto University

Principal Investigator

佐藤 史帆  京都大学, 法学研究科, 特定助教 (00851297)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2024-03-31
Keywords継続的契約 / 特別の解約告知
Outline of Annual Research Achievements

特別の解約告知とは、重大な事由がある場合に、継続的契約を将来に向かって終了させる制度である。本研究は、特別の解約告知に関する包括的な理論枠組みを構築することを目的とする。
日本の改正前民法には、特別の解約告知に関する一般的な規律はなく、各則の一部において定められているにすぎない。そのため、継続的契約のうち、各則の規定をもたない典型契約や非典型契約については、契約関係の終了に伴う問題は、判例や学説の解釈に委ねられてきた。特別の解約告知に関する一般的な規律の創設は、債権法改正においても検討されたが、最終的には規定は設けられなかった。さらに、特別の解約告知の規律対象をカバーすると考えられた解除や事情変更の規定も、当初提案された形では規定されず、また、各則規定についても、賃貸借に関する背信性不存在の法理の規定の明文化は見送られた。そのため、改正後も、特別の解約告知の規律対象と考えられる部分は、そのほとんどが解釈に委ねられることとなった。
しかし、賃貸借契約やフランチャイズ契約等、現代社会において、契約の履行をするにあたって時間の経過を伴う契約は多岐にわたり、かつ、非常に重要な役割を果たしている。さらに、最も議論の蓄積のある賃貸借法における背信性不存在の法理についてさえ、時代背景の異なる時期に作られた社会法的性格の強い判例法理がいまだに妥当しており、その現代化が求められている。したがって、その重要性が認識されながらも十分な理論的枠組みが存在しない継続的契約の解消に関し、その基礎にある考え方を明らかにし、包括的な理論枠組みを構築することは、必要不可欠である。
以上の課題を検討する手がかりを得るため、今年度は、ドイツ法を取り上げ、特に各則規定に関する議論を調査・分析した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初の予定通り、2020年度は、特にドイツにおける特別の解約告知に関する各則の議論を調査・分析した。ドイツでは、2002年の債務法改正により、継続的契約の特別の解約告知を認める総則規定(BGB314条)が新設されたほか、いくつかの各則の規定も新設・改正された。既存の規定と合わせると、特別の解約告知の規律は、多岐に及ぶ。もっとも、ドイツにおいても、これらの規定は、「継続的契約の終了」という包括的な視点の下で体系的に整理して論じられているわけではない。検討の結果、これらの規定は、契約の拘束力に着目し、総則規定との関係に即して分類すると、次のように整理きることがわかった。つまり、(i)BGB314条の確認規定として、①BGB314条を確認するにとどまる規定、②重大な事由に当たる事由を例示列挙することにより、BGB314条を具体化する規定、(ii)BGB314条と同様の方向性だが、要件を一部修正するものとして、③BGB314条の対象を拡張する規定、④重大な事由を拡張する規定、⑤手続的要件を不要とする規定、さらに、(iii)⑥重大な事由がない場合に継続的契約の解消を認める規定(任意解除)である。
BGB314条を修正する規定は、いずれもBGB314条の要件を緩和する方向の修正である。要件の緩和が認められる理由について、各契約の特性をふまえ、議論を調査・分析した。

Strategy for Future Research Activity

ドイツ法に関する検討課題として、第一に、継続的契約においては、期間が長期に及ぶことや、当事者間に信頼関係が生じることが多いことから、契約関係の継続中にも、当事者間に認められるべき特別な義務-配慮義務、忠実義務、協力義務等-をはじめ、単発的契約とは異なる規律を適用すべき場面がありうる。これらの継続的契約に固有の規律についても検討の必要がある。
第二に、行為基礎論との関係について、行為基礎理論を契約外在的なものと捉えることについては異論もあり、行為基礎論の理解及び継続的契約の解消法理との関係についても、契約の射程という観点からあらためて検討し直す必要がある。
第三に、手続的要件を非常に重視する考え方は、ドイツに固有のものである。他の法制及び国際条約、国際的モデル法等の動向を調査し、ドイツ法と比較することで、ドイツ法の考え方の意義と問題点を明らかにすることができると考えられる。
次に、 日本法に関する検討課題として、第一に、日本の賃貸借法については、現在でも、戦後の住宅難の時期に形成され、福祉国家的な要素が強い判例法理が依然として妥当している。現在の日本は、賃貸借法が形成された当時に基礎とされた状況とは異なってきていることから、賃貸借法の現代化が必要である。このように、継続的契約の代表例とされる賃貸借法についても、現代化に向けた議論に資する検討をする必要があり、それを通じて現代における継続的契約の解消法理を明らかにしていくことが可能になると考えられる。
第二に、継続的契約に含まれる契約類型は多岐に渡るため、それぞれの契約類型に即して一般原則を修正する必要性が生じる場合も多い。そのため、継続的契約に属する賃貸借以外の契約類型について、民法に規定された個別規定のほか、実務の状況を含め、個別的な検討を行うことを通じて、継続的契約の解消法理の全体像を検討する必要がある。

Causes of Carryover

新型コロナの影響などもあり、今年度は旅費の支出がなかったため。

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Published: 2021-12-27  

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