2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K13371
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
岡田 陽介 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (40598877)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 会社法 / 組織再編 / M&A / 会社分割 / 債権者保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、(1)会社分割は会社の規模を問わず一律に適用される手続きを規定しているが、それは大規模公開会社を念頭に置いて制度設計がされているのではないか?債権者が害される会社分割が実際に発生しているのは主として小規模閉鎖会社においてであるが、そのような会社の事情も考慮に入れて債権者保護制度を再設計すべきではないのか?(2)会社分割は債権者の属性を問わず一律に適用される手続きを規定しているが、それはそもそも会社が金融機関から融資を受けることを念頭において制度設計がなされているのではないか?このように考えると、金融機関以外の債権者に酷な制度設計となっていることが想定されるが、金融機関以外の債権者も十分に保護されるように債権者保護制度を再設計すべきではないのか?、という問題意識のもと、わが国の会社分割制度ならびに会社債権者保護制度に関する立法や判例のサーベイを行った。 立法に関しては、商法・会社法については、会社分割に関する改正が行われた平成12年商法改正、平成17年会社法、平成26年会社法改正、民法については、本研究の対象とする債権者保護制度の1つとして機能する詐害行為取消権に関する改正が行われた平成29年民法(債権法)改正を対象とし、その改正過程における議論や改正内容を中心に確認した。 判例に関しては、会社分割における債権者保護のために、詐害行為取消権、破産法上の否認権、商号続用責任の類推適用、法人格否認の法理、信義則が利用されたもの等を確認し、分析した。多くは、平成26年会社法改正前の判例であり、当時の会社法の債権者保護制度にどのような問題点があったから発生した事件であったのかという観点から整理を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は新型コロナウィルスの影響で研究の中断を余儀なくされる時期があったり、また参加を予定していた研究会が中止されたため研究者間での意見交換の機会が減るなどの影響もあったものの、検討の対象がわが国の立法や判例であったことも幸いし、資料の収集、整理、分析等をほぼ予定通り行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に実施したわが国の立法・判例の分析を踏まえ、2021年度・2022年度は、わが国と類似する会社分割制度を有する国のうち、会社分割制度を世界で初めて導入し、現在もわが国と類似する債権者保護制度を有するフランス法、および1990年代に立法が行われわが国の会社分割制度に大きな影響を与えたドイツ法を考察したうえで、わが国の現行法と比較、検討することを計画している。 研究開始当初の計画では、2021年度・2022年度は現地に赴き資料収集・調査等を行う予定であった。しかし、2021年5月段階の新型コロナウィルスの感染拡大状況に照らすと、本年度は海外渡航ができない可能性が極めて高い。海外渡航が不可能な場合には、本年度は海外より文献を取り寄せ、それを分析する研究に切り替える予定である。その場合、海外での資料収集・調査は2022年度にまとめて実施するという研究計画に変更する。
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナウイルスの影響により、当初計画していた国内出張を見合わせざるをえず、また資料整理等も自分で行わざるをえなくなった。そのため、発生した次年度使用額は、2021年度の旅費および人件費・謝金として使用する予定である。
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