2020 Fiscal Year Research-status Report
Restructuring corporate governance by protecting minority shareholders and securing independent directors
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20K13374
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Research Institution | Shobi University |
Principal Investigator |
奥乃 真弓 尚美学園大学, 総合政策学部, 教授(移行) (60866325)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コーポレート・ガバナンス / 少数株主 / 独立取締役 / 親子上場 / 会社の支配 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は研究目的で設定した3つのResearch Question(RQ)のうちRQ1, 2について検討を行った。 【RQ1少数株主の保護】支配株主(親会社)の権利と責任という法的論点について近年注目されているStakeholder Capitalismの観点から「親会社の行動は機関投資家の支持を得られるのか」を検討した。具体的には2020年に8年ぶりに改訂された英国スチュワードシップ・コード(以下、SC2020)と、再改訂された日本のSC(以下、日本版SC)を精査した。 ①SC2020の分析:SC2020ではスチュワードシップが再定義されサステナビリティの観点からESGが重視されている。日本版SCへの示唆として、金融市場、企業および機関投資家の観点からESG要素をいかにコードに規定するかという課題を提起した(国際商事法務論文)。 ②日本版SCの検討課題:SC2020の分析から、ESGは重要な課題ゆえにESG要素の一括した規定、あるいは常に環境(E)要素に重点を置くのではなく、各機関が投資対象企業を取り巻く環境から重視すべきESG要素を考慮すべきと指摘した。例えば、昨今のコロナ禍では従業員の安全やサプライチェーンの保全といった「S」要素が気候変動などの「E」要素に対して優先するべきであり、これは効率性の観点からも妥当である。企業は、ESGの各要素の重要性(materiality)の高低を社会状況や事業の内容等から考慮し自らの判断でESG要素に自発的に取り組むべきであり、投資家もまた同様にこうした考慮を基に自身の判断で投資を行うべきであることを提示した(国際取引法学会論文)。 【RQ2独立社外取締役の保護】「事実上の取締役」の観点、英国の「影の取締役」の観点、米国の信認義務、Majority of Minority(MoM)の情報開示など、比較法の観点から横断的に検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【計画より進捗した点】株主と企業の関係について、スチュワードシップ・コードを通じた比較法の観点からの検討において、今や社会において無視することのできない最重要課題の一つであるESG要素への考慮を現状のコロナ禍を踏まえ検討、分析を行った。こうした検討から、ESGの各要素の重要性(materiality)の高低に関し、それぞれの企業を取り巻く環境、社会状況や事業の内容等から考慮することの重要性を提示した。 【計画通りの進捗点】(1)親子上場問題の本質である支配的な株主との利益相反における少数株主の保護、(2) (1)の観点から、独立社外取締役を軸としても支配株主が独立社外取締役を再任しない等ができてしまう状況における企業のガバナンスに関し、英国に加えEUにおけるガバナンスへの取組みから考察を行った。2021年度内に報告予定。 【計画より遅れている点】本研究の目的を達成するため、毎年アメリカおよびイギリスで調査を行い、比較法の観点から横断的に研究を進め、証券市場のグローバル化と透明性の向上に貢献するコーポレート・ガバナンスに関する提言をまとめる予定であった。 しかし、コロナ禍により、計画していた出張を実施することができなかった。その代替として、比較法の観点からの研究は、リモートワークによる研究者たちとのコミュニケーション、研究に関する文献等から行った。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は研究目的で設定した3つのResearch Question(RQ)のうちRQ2, 3について検討を行う予定である。 【RQ2独立社外取締役の保護】今年度は、ガバナンスにおいて独立社外取締役を軸としても支配株主が独立社外取締役を再任しない等ができてしまう状況について、「事実上の取締役」、イギリスの「影の取締役」、アメリカの信認義務、Majority of Minority(MoM)の情報開示の観点から横断的に調査を行った。次年度は、この調査をさらに進め、こうした調査、検討から「会社を支配する」という意味の明確化を図る。また、その成果をまとめ、次年度前期で論文を投稿する予定である。 【RQ3支配の好影響】親子上場の利点の一つは経営上ベネフィットがコストを上回る点にある。会社を「支配するもの」の存在が負の影響だけではなく会社のエージェンシー問題の緩和という積極的な役割を担うことを比較法の観点から横断的に研究を行い実証する。すなわち、会社を「支配するもの」の存在が好影響をもたらす場合について、主にアメリカの先行研究について調査・分析を行い「支配」の両側面を分析、検討することで公正な立場からガバナンスに対する提言を導く。 最終的には、RQ1およびRQ3について得られた結果をRQ2の示唆として取りまとめ、「会社を支配する」という意味の明確化を図り、2021年度中に論文として報告予定である。
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Causes of Carryover |
本研究の目的を達成するため、アメリカおよびイギリスで海外調査を行い、比較法の観点から横断的に研究を進める予定であったが、コロナ禍により、計画していた出張を行うことができなかった。年度当初は出張予定を延期しコロナ禍が落ち着き次第、出張することを計画していたが、1年以上コロナ禍が持続、拡大したため最終的に2020年度は出張を断念した。出張の代替として、リモートワークで研究者たちとコミュニケーションを行った。その際、リモートワークの環境が不十分であること、外部図書館にもアクセスできず図書等の不足を痛感したので、リモートワークのための機器の整備及び研究書籍の購入等に出張予算を当てることとする。
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