2023 Fiscal Year Annual Research Report
分割的因果関係論による責任成立論・減責論・求償論への包括的アプローチの可能性
Project/Area Number |
20K13375
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
大澤 逸平 専修大学, 法務研究科, 教授 (40580387)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 民法 / 不法行為法 / フランス法 / 因果関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の期間はコロナ禍の時期と重なり、現在進行形で因果関係論の問題が生じた。フランス人研究者との共同研究会における報告においては、感染対策とされる各種の措置を講じないことが契約責任や不法行為責任における責任の成否や範囲に及ぼす影響を検討したものであり、従前の日本法における議論状況の延長線上に近時の状況を位置づけることを試みた。この報告は外国法との比較においてわが国の解決の特色を明らかにする点で、我が国において結果発生に複数の要因が寄与する場面の解決につき、どのような概念・枠組みにどのような役割を担わせているのかを明らかにする作業の一端を行った。 また、この報告をきっかけとして、各種の問題の解決に当たっては因果関係の事実性とその規範性・評価性とをどのように接合させるか、という観点から、とりわけ、近時の因果関係論における科学的判断と法的判断との関係をめぐる議論のあり方にさらなる検討の必要性を見いだすこととなった。そこで日仏法学会総会における報告では、フランスにおいて2000年代に多くの訴訟が提起されて学説や実務において盛んな議論の対象となった、B型肝炎ワクチン接種による副作用の発生をめぐる因果関係の判定のあり方を分析した。かかる議論においては、因果関係が「法的」な概念であるか、それとも「事実」的概念かという問題が自覚的に論じられ、因果関係論がどのような機能を担うべきか自覚的な検討を促すものであるといえる。本報告は、同学会の慣例に従い、本研究期間終了後に発行される日仏法学誌上において公表予定であり、本年度は、同学会での議論を踏まえた議論の再検討の作業を行った。 また海外出張の機会に、複数のフランス人研究者とのミーティングの機会を得ることができ、現在の議論状況やそれに対する多様な視座を得ることが出来たが、年度内に成果物として公表することはできなかった。
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