2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K13376
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
萩原 基裕 大東文化大学, 法学部, 教授 (30719901)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 追完請求権 / 契約不適合 / 不適合物の取付け / 追完請求権の射程 / 売買契約 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は追完請求権の射程を明らかにするために、売買目的物に契約不適合があったが、買主がそれに気づかないまま別の物に取り付けてしまい、その後契約不適合が発覚したことで追完請求権を行使したところ、追完のために契約不適合物の取外しが必要となり、また改めて取得した契約不適合のない物を取り付ける必要が生じたという場合を問題場面として設定した。この場合において買主は追完請求権の枠内で売主に対して修補や代替物の引渡しのみならず、契約不適合物の取外しや契約に適合する物の再度の取付けまで要求できるのか、あるいはそうした行為は追完請求によって求めることはできず、ただ415条を通じて費用の賠償のみ求めることができるのか、という問題を検討した。この問題についてはすでに以前、ドイツにおいても生じており、学説や判例において大いに論じられた問題でもあった。そこでこの問題の検討にあたってはドイツ法との比較を試みた。ドイツにおいては最終的には民法典(BGB)の改正によって、売主に対して瑕疵ある物の取外しと瑕疵のない物の再度の取付けの費用を負担させるという解決に至っている(BGB439条3項)。しかしドイツにおける立法までの過程を見るに、解釈論的な積み重ねの上で追完の枠内でこの問題が処理されたというよりも、特に欧州法との関係もあってこうした解決が立法措置によって実現されたのではないか、との知見に至った。そこで日本民法562条をめぐって同様の問題が生じた場合には、追完の枠内ではなく415条の債務不履行責任を通じて売主に取外しと取付けの費用を請求できるというべきという結論に至った。なおその際には415条1項ただし書の免責事由が問題となるところ、その検討も今後の課題となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度も感染症対策を踏まえつつ研究活動を続けることとなり、前年度に生じた遅れを挽回できるまでには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本来の計画と比べると遅れは生じてしまっているものの、追完請求に関する研究は着実に進めることができており、また他の学者よる成果も公表されだしている。2022年度は他の学者による研究成果にも目を配りつつ、追完請求権に関する検討を進めていく。
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Causes of Carryover |
初年度(2020年度)、コロナ禍のために次年度使用額が生じてしまった。さらに2021年度も引き続き感染症対策を踏まえた研究活動が必要となった。特に研究目的での海外渡航については不可能ではなかったかもしれないが、リスクを踏まえて見合わせたこともあり、研究のための支出が滞ってしまった。そのため、2020年度に続き2021年度の分についても続けて次年度使用額が生じることとなってしまった。2022年度は、研究目的での海外渡航についてはコロナ禍のみならず他の不安要素も生じているところ、本研究に関連する教科書、体系書などの購入、また洋書文献などの購入を通じて、予算を消化していきたい。
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