2022 Fiscal Year Research-status Report
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20K13376
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
萩原 基裕 大東文化大学, 法学部, 教授 (30719901)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 追完請求権 / 契約不適合 / 追完請求権の射程 / 売買契約 / 売主の求償権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題に関連して、2022年度は2回の研究会報告と1回の紀要論文の上梓をすることができた。研究報告のうち1回は、2022年12月14日(水)に開催された大東文化大学法学研究所2022年度第3回研究会における報告「ドイツにおける売主の追完義務の範囲について―2018年BGB改正までの判例・学説を中心に―」である。2021年度に検討した追完をめぐる問題について、その際には検討が不十分であったドイツ判例法理を補ったものである。この研究報告を本学の法学研究所の紀要(所報)に掲載した。もう1回の研究会報告は、2023年3月18日(土)に開催された椿民法研究塾における報告「供給連鎖における製造者への責任追及のあり方―BGB売買法における売主の求償権を素材として―」である。この報告では2023年度に引き続き検討を予定している売買における求償連鎖の問題を扱った。2022年度はBGBにおける売主の求償制度を扱った。その意義は以下の通りである。562条に売主の契約不適合責任において契約レベルでは売主が第一次的に追完に伴うリスクを負担する。しかし契約不適合が売主以外の卸売や製造者の下で生じていたという場合、その原因を生じさせた者が責任を負うべきであろう。ドイツではこのような場合に売主に求償権を認めることで救済をするため、2018年のBGB改正によってBGB445a条が規定されるに至った。日本民法にはこれに類する制度はないが、瑕疵の発生原因が製造者など売主以外の者にあるのであればその者に責任を負担させる、あるいは少なくとも売主からの求償を認めることが望ましい。そのための第一歩として、ドイツ民法における売主の求償制度を検討する必要があるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでのコロナ禍のために国内外における資料収集にさまざまな制限があったことから、当初計画していた研究計画も修正を余儀なくされた。追完請求権に関する比較法的検討自体は進められているものの、当初予定していた改正前民法における瑕疵担保責任の位置付けの検討については遅れたままである。研究期間を延長することもできたところ、本来の計画になるべく近づけることができるように2023年度も引き続き研究を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度も引き続き、ドイツ民法理論との比較を通じて追完請求権の本質を探っていく。2022年度の研究概要でも少し述べたように、2023年度はドイツにおける売主の求償権(求償連鎖)の制度を扱っていきたいと考えている。また今年度はコロナに対する基本的な対応が国家レベルで変わったことから、可能であれば海外での資料収集も試みたい。
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Causes of Carryover |
これまでコロナ禍において研究を進めていく中で計画通りに支出をすることができてこなかった。具体的には研究開始の初年度において研究のために使用するための文献の発注や資料収集が遅れたことや、できなかったこともあった。また当初予定していた資料収集などを目的とした海外渡航もコロナ禍の中で制限を受けざるを得なかった。2023年度からはコロナ対応が変わり通常の状況に戻ってくると考えられるため、計画通りの予算支出を目指したい。
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