2020 Fiscal Year Research-status Report
Asset Based Lending and Security Interests in Personal Property in Agriculture
Project/Area Number |
20K13377
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小島 庸輔 早稲田大学, 法学学術院, 助手 (40822276)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 農業金融 / 統一商事法典第9編 / 農産物担保融資 / 担保物権法 / アメリカ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,アメリカ法との比較から,農業分野における動産担保・債権担保の法の在り方を提唱しようとするものである。2020年度は,農産物を目的物とする担保取引に関するアメリカ法の特徴的な規律を定める食料安全保障法と生鮮農作物法,パッカーズ&ストックヤード法などを検討した。 食糧安全保障法の農産物の買主の保護の規定において,農産物の担保権は,担保権者が担保権の存在を買主に事前に通知する,もしくは,買主に対する登録制度を用いて通知するときには,買主が売買代金を担保権者に直接支払う場合を除き,買主に対しても有効になるとされる。こうした規律について,沿革を調査し,その意義を明らかにした。農産物を担保とする融資者は,担保権が存続しないことを前提に設定者に自由な農産物の売却を委ね,設定者から債権の回収を行う方法と,担保権が存続することを前提に買主から売買代金を直接に受領して,債権を回収する方法とを選択することができる。これらに関する成果を紀要で公表した。 また,生鮮農作物法,パッカーズ&ストックヤード法においては,非分別型の浮動信託の制度によって,農家などの売主は,農産物とそれに由来する加工製品,売掛債権,回収金などから優先的な債権の回収を図ることができる。これによって,農産物の売主は,動産一般の売主の約定担保権に比しても強力な担保を取得することになる。こうした制度の沿革と効果についての調査,検討を行い,その成果を紀要で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は,アメリカでの資料収集を予定していたが,新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い,実現できなかった。そうしたなかでも,やむをえず国内からアクセス可能な資料の収集と分析に努めて,事前の予定通りにアメリカ法の食料安全保障法と生鮮農作物法,パッカーズ&ストックヤード法などを検討し,一応の成果を論文として公表することができた。以上の理由から,研究はおおむね順調に進展しているものと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は,当初の予定通り,担保取引法を規律する統一商事法典第9編にみられる農業分野に特有の規定を検討する。統一商事法典第9編の規定は,これまで検討した食糧安全保障法,生鮮農作物法,パッカーズ&ストックヤード法などと協働して,農業分野の動産担保・債権担保を規律しているものといえるから,一連の検討を通して,アメリカ法における農業分野の動産・債権担保融資の在り方を明らかにする。 なお,2020年度に実施することのできなかったアメリカでの資料収集も,感染症の状況が改善したときには実施する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の拡大により,アメリカでの資料収集に従事できなかったこと,また,その代替として発注した書籍の納品が遅れたことにより,次年度使用額が生じた。次年度のアメリカでの資料収集の滞在期間を予定より長くとり,これまでの資料収集の遅れを取り戻すために,使用する計画である。
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