2021 Fiscal Year Research-status Report
不法行為法における「違法性」要件の意義再考:AI時代の到来を契機として
Project/Area Number |
20K13379
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
角本 和理 立命館大学, 政策科学部, 准教授 (50779577)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 不法行為責任 / 違法性要件 / 過失要件 / 過失責任 / 無過失責任 |
Outline of Annual Research Achievements |
私法上の不法行為責任制度は、社会の基幹技術となりつつある人工知能(AI)が係って発生する権益侵害に如何に対応することができるか。この課題につき、本研究では、不法行為訴訟における違法性要件の機能を肯定的に評価する立場から、特に2021年度には次の検討を行った。 20年度の後半期に引き続き、リベラリズム、コミュニタリアニズム、多文化主義、普遍主義等の政治思想や、資本主義や社会主義等の経済思想に関する西洋・東洋の研究を学際的に分析することで、それらの思想が私法の価値判断・利益衡量に与える影響につき考察しつつ、「尊厳の保障」を重視する観点から不法行為法の意義を再検討する作業に着手し、研究会にて構想報告を行った。 以上の作業と並行して、Society 5.0における民事上の監督義務者の責任(714条)の意義について、ICTを活用する「見守りサービス」事業者を念頭に基礎的に考察することで、709条の一般不法行為責任と、714条の中間責任の役割を比較検討し、もって709条の違法性要件の意義を分析する作業を開始している。 22年度は、上記の作業を引き続き行い、研究の中間的な成果を論文として公表する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、研究の進展具合としては、方法面については当初の計画から大きく変更しているものの、実質的にはほとんど遅れることなく進めることができている。そのため、結果的にはおおむね順調に進展していると評価できる。しかしながら、コロナ禍の影響は断続的に続いているため、研究手法、研究の順序、文献収集の在り方については定期的に調整を行った。この方針の変更は、22年度以降の研究にも大きな影響があることが予想される。しかしながらこの点については、結局のところ新型コロナウイルス感染症の流行の具合次第でもあるため、今後も臨機応変に調整を行わざるを得ない。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、不法行為法の意義・機能に関する基礎的考察や、AI時代における不法行為法上の中間責任の意義に関する論考を執筆・公表したうえで、その点に関する討議を各種研究会等にて行う予定である。 その後、それらの機会で得られた知見を踏まえて、AI時代における不法行為法上の違法性要件の意義を、これまでよりも踏み込んで考察する予定である。 具体的な研究手法としては、当面の間は、アメリカ・中国両国を実際に訪問しての学会参加、ネットワークづくり、文献収集等はなお見送らざるをえないかもしれず、日本国内での文献収集とその分析を中心とすることとなる可能性が高い。しかしながら、オンラインのシンポジウム等に関しては、国内外のものについて、可能な限り積極的に参加する予定である。もちろん、コロナ禍の影響がより限定的になった場合には、出張を伴う研究会・学会参加や調査等を積極的に行うこともありうる。
|
Research Products
(1 results)