2020 Fiscal Year Research-status Report
市民窓口の実態と効果に関する実証的研究:弁護士倫理規制の実効化に向けて
Project/Area Number |
20K13390
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
山田 恵子 西南学院大学, 法学部, 准教授 (80615063)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 市民窓口 / 弁護士倫理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年、弁護士倫理規制手法としてプレゼンスを高める「市民窓口」をとりあげ、その設置・運営が弁護士に対するクレイムの量的・質的変遷ならびに弁護士の倫理水準に与える効果を実証的に解明することを目的とする。とりわけ、本研究は、市民窓口の全国的状況とともに単位弁護士会ごとの状況(差異)に焦点を合わせ、弁護士に対するクレイムの実態・弁護士の倫理水準を規定する市民窓口の「制度的・組織的要因」を明らかにすることで、真に実効的な弁護士倫理規制の在り方を提言することを目指すものである。 上記の研究目的を遂行するため、3年間の研究期間の1年目となる2020年度は、本研究課題の基礎をなす各単位会の「市民窓口」に係る定量的データ、すなわち『弁護士白書』所収の公表統計を基にした弁護士に対する苦情の量的・質的変遷ならびに各単位会の差異に関するデータの整理作業を開始した。また、関連する国内外の先行文献の渉猟・整理に着手し、その過程で得られた知見をもとに論文1本、図書(共著)1冊を公表した。 現時点では、市民窓口において、①日本の弁護士はクレイム申立てを受ける確率を一定数有しており、弁護士数の増大は、クレイムを受けるべき非倫理的弁護士(ないし質の低い弁護士)を純増せしめるが、それを超越する形で、非倫理的弁護士の産出を帰結するわけではないこと、②「県民人口あたりの苦情受付件数」(絶対値)と「都道府県別弁護士数あたりの苦情対象弁護士数」(相対値)の比較を基礎にすると、東京・大阪は、絶対値のみで各年とも上位を占めるが、他方、北海道・愛知・京都・岡山・福岡は、絶対値・相対値ともに恒常的に上位を占めすことから、単位会の――より構造的な――個別的状況の存在が伺われること等が判明している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度に実施を計画していた①市民窓口の公表統計に係る定量的分析、②市民窓口における各種苦情に対する認識・行動、市民窓口の効果等を尋ねる質問紙調査(200サンプル程度)のいずれも完了しておらず、大幅に遅れていると言わざるを得ない。 本研究課題の進捗が大幅に遅れている主たる理由は、2020年6月以降、妊娠・出産に伴う健康状態の悪化により、本研究に取り組む時間が極めて制限されたことによる(2021年1月以降は、産前・産後休暇を取得している)。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の2年目である2021年度は当初、2020年度に完了予定であった質問紙調査の分析結果を基にした、市民窓口の運営実態に関するインデプス・インタビューの実施を計画していた。しかしながら、①上述の通り、質問紙調査が未実施であること、および②2021年4月から2022年2月までの育児休暇取得により、2021年度の研究期間が実質2か月間足らずとなることから、研究計画の大幅な見直しが必要である。 そこで、2021度はまず、市民窓口の公表統計に係る定量的分析の完了を目指す。具体的には、『弁護士白書』所収の公表統計をもとにした弁護士に対する苦情の量的・質的変遷ならびに各単位会の差異に関して詳細な分析を行う。その際、可能な限り、市民窓口と懲戒請求・紛議調停申立との比較を分析対象として拡大することで、より精緻な検討を行う。 また、新型コロナウィルス感染症拡大の影響を見極めつつ、Web会議ツールを積極的に活用して、各単位弁護士会(に所属する弁護士)から意見・助言を得る機会を設けることで、2022年度以降に、弁護士に対する質問紙調査およびインデプス・インタビュー調査を遂行し、内外の学会、学術専門雑誌で研究成果を発表するための準備を着実に進める。
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Causes of Carryover |
・理由:①市民窓口に係る定量的データの本格的分析を行うことができず、データ収集・加工に予定していた予算(特に物品費)を費消しなかったこと、②弁護士に対する質問紙調査を実施できなかったため謝金等を費消しなかったこと、③新型コロナウィルス感染症拡大により、内外の学術大会の多くがオンライン開催となり旅費を費消しなかったことが、次年度使用額が生じた主要な理由である。
・使用計画:次年度は、市民窓口に係る定量的データの本格的分析を行うべく、データ収集・加工に要する物品費を計上する。また当該分析にあたっては、上述の通り、市民窓口と懲戒請求・紛議調停申立との比較を分析対象に加えてより精緻な検討を行う予定であり、そのためのデータ整理作業を円滑に行うべく、アルバイト学生の雇用に要する人件費を計上する。
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Research Products
(2 results)