2021 Fiscal Year Research-status Report
Empirical Study on Mechanism of Breakdown and Crisis of Democracies
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20K13392
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
関 能徳 筑波大学, 人文社会系, 助教 (40824256)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 政治学 / 政治経済学 / 比較政治学 / 政治行動論 / 民主主義の崩壊 / 民主主義の危機 / 民主主義への支持態度 / 経済的不平等 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の成果を踏まえ、2021年度は(a)有権者の政策選好におけるトレード・オフの規定要因についてのコンジョイント分析、(b)民主主義の理解についてのコンジョイント分析を行った。
(a)については、有権者が政策選好を表明する際、政府の政策がもたらしうる有権者の物質的利益、社会への利益、不平等がもたしうる負の外部性のうち、どの要因を特に重視するのか、また選好表明のパターンに所得が影響を及ぼすのかを検証した。日本の有権者を対象としたコンジョイント分析の結果、物質的自己利益と犯罪率の増加(負の外部性の1つ)に日本の有権者は大きく反応することが分かった。また、労働生産性を大きく減じる政策に対して忌避感を示すのは、所得が中央値以上の有権者のみであることも明らかとなった。これは所得再分配政策への選好形成に際して負の外部性を考慮に入れるのは富裕層のみという先行研究の知見と合致する。本研究の成果はワーキングペーパー"Why income redistribution?"にまとめられている。
(b)については、日本の有権者を対象としたコンジョイント分析を行い、有権者がある政治体制が民主的かそうでないかを認識・評価する際に、民主主義のもたらしうるさまざまな側面や価値、具体的には多数代表、チェック・アンド・バランス、マイノリティ保護、経済成長、社会福祉などのうち、どの要素を特に重視するかを明らかにした。分析の結果、自由で公正な選挙や成人市民による政治参加などの手続的な側面を最も重視していること、同時にその他の側面についても政治体制の評価に一定程度の影響があることが明らかとなった。近年の民主主義の後退に関する先行研究の知見と異なり、有権者の党派性(特に与党支持か野党支持かという違い)がチェック・アンド・バランスやマイノリティ保護の側面の強調に及ぼす影響は、予備的な分析からは確認できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度に執筆したワーキングペーパーを2021年4月と9月に学会報告し、また同12月に本務校のセミナーで報告した。論文は査読付英文誌に投稿し現在審査中である。2022年1月に3つのサーベイ実験を行った(別の科研費の調査の一部で実施)。この調査を踏まえて2021年度に執筆したワーキングペーパー"Why income redistribution? A conjoint analysis in Japan"は2022年4月に学会報告し、討論者からのコメントを踏まえて修正し、また追加のサーベイ実験を計画している。民主主義の理解についてのコンジョイント分析は、今回得られた知見を踏まえ調査計画を改善した上で、また追加のプレ実験なども踏まえた上で、2022年度中に日本、台湾、フランス、アメリカなどでサーベイ実験を計画している。日本と台湾での調査については、現在所属先の研究倫理審査委員会に調査計画の承認を申請している。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は上述したサーベイ実験を行うため、それに先立ってプレ実験を年度の初めに何度か実施し、実験デザインを確定する。分析結果は2022年度内に国内外の学会や研究会などで順次報告し、また2023年度に国際学会で報告および学術誌に投稿すべく準備を進める。2021年度に実施した調査に基づいた日本の有権者を対象とした民主主義の認識・理解についての研究成果は、2022年度前半に査読付英文学術誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
当初の予定では2021年度予算を主にサーベイ実験の謝金として使用する予定だったが、他の科研プロジェクト内で必要な調査を実施したため次年度に繰り越すこととした。また、コロナ禍のため国際学会での報告はすべてオンラインで行ったため、米国への渡航費などの支出が生じなかった。2022年度助成金とともに、プレ実験および本実験のために主として利用する。
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Research Products
(5 results)