2022 Fiscal Year Research-status Report
オーラルヒストリーのデータ分析:英領インド分割の個人レベルでの影響
Project/Area Number |
20K13401
|
Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
菊田 恭輔 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センターアフリカ研究グループ, 研究員 (70865196)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | オーラルヒストリー / データ分析 / インド / インド分割 / 紛争 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に作成したデータをもとに分析を行った。1947 Archiveのデータをもとに、1947年のインド分割においてパキスタン側およびインド側に属する事になった人々について、その後の体験(暴力の経験や就業、結婚、家庭)に違いがないか分析した。特に、プンジャブ州とベンガル州の境界(ラドクリフ・ライン)は恣意的に決められた境界であり、自然実験が可能なため、この境界の内外での比較を統計的に行った。しかし、多くの結果変数について、多くのモデルにおいて、有意な結果を得ることができず、プロジェクトとして行き詰まっているのが現状である。暴力の経験については、インドに属することになった人で若干多く報告されているものの、モデルによって結果が変わり、頑強ではない。また、パキスタンに比べてインドではこうした経験を話しやすいという可能性もある。一方、どの国でも事実として正確に報告されると考えられる、就業や結婚、家庭については有意な差が見られず、点推定の正負もモデルによって変わってしまう。加えて、信頼区間も大きいため、インド分割の効果がないと言い切れない。こうした問題を解決するため、性別や宗教、地域ごとに比較を行ってみたが、有意かつ頑強な結果は得られていない。一方、ラドクリフ・ラインに限らず、全ての印パ国境沿いで比較を行うと、インド側で就業率・結婚率が高く、子供が多いことがわかった。しかし、ラドクリフ・ライン以外の国境は、植民地行政区画や間接統治地域の境界と重なるため、インド分割の効果と言い切ることは難しいかもしれない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前回の報告での遅れに加え、分析結果が得られなかったことで、分析全体を再考している。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記の問題を解決するため、またプロジェクト自体の新規性を高めるため、結果変数を変えることを計画している。今までは、暴力の経験や就業、結婚、家庭と言った客観的な経験を結果変数としてきた。しかし、上で書いたように意味のある結果は得られなかった。また、問いとしても新規性に欠ける部分もある(インド側で就業や結婚が多いことは、印パの歴史を考えれば当たり前である)。 そこで、結果変数をインド分割や植民地支配をどのように記憶しているのかという歴史記憶にしようと考えている。1947 Archiveでインド分割の過程や植民地支配を回答者が叙述しており、テキスト分析を用い、正もしくは負の表現が多いかどうかを測ることができる。印パという異なる政府に属することで、歴史的な体験を異なったように記憶したと示すことができれば、歴史認識の研究に一石を投ずることができるのではないかと考えている。現在、テキスト分析の方法を再度学習し、本研究への応用を試みているところである。
|
Causes of Carryover |
分析が上手くいかなかったため、学会発表などにかかる費用を支出しなかった
|