2023 Fiscal Year Research-status Report
オーラルヒストリーのデータ分析:英領インド分割の個人レベルでの影響
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20K13401
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
菊田 恭輔 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センターアフリカ研究グループ, 研究員 (70865196)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | オーラルヒストリー / 紛争 / インド / インド分割 / 歴史記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度は、1947年のインド分割、特にブンジャブ州とベンガル州の境界(いわゆるラドクリフ・ライン)が宗教的暴力や就業、結婚、家庭環境にどのような影響を与えたのか分析した。しかし、あまり有意な結果は得られず、また信頼区間が大きいため、効果がないとも言い切れない。また、性別や宗教、地域別に分析した場合も、同じような結果となった。ラドクリフ・ラインだけでなく全ての境界内外で比較を行うと、有意な差が見られるものの、ラドクリフ・ライン以外の境界は、植民地期およびそれ以前の王国の境界を反映している事が多く、因果推論上の問題が残る。 そこで、当該年度では、1947 Archiveで最近更新されたデータを取り込み、テキストデータの分類についてもより精緻化するようにした。具体的には、テキストを分類する際のトレーニングデータの量を増やし、使用するモデルについても変更を加えた。また、宗教的暴力や就業、結婚、家庭環境といった客観的な体験でなく、回答者の主観的な歴史記憶(具体的には、インド分割をポジティブあるいはネガティブなものとして捉えているか)に対する影響を分析するようにした。結果、「たまたま」インドあるいはパキスタンに居住することになったことにより、インド分割の捉え方が真逆であることが分かった。インドの居住者は分割を負の遺産と捉える傾向があるのに対し、パキスタンの居住者は分割をパキスタン独立のポジティブな変化と捉える傾向があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前年度の分析がうまくいかなかったこと、および分析計画を大幅に修正したことから、遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
一年延長したことから、次年度が最終年となる。どうにか論文にまとめ、学術誌に投稿・公刊できるようにスピード感を持って進めたい。
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Causes of Carryover |
予算は概ね計画通りに執行している。残額は必要な備品やサブスクリプションサービスに使用する予定。
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