2021 Fiscal Year Research-status Report
18世紀後半のフランスにおけるアメリカ論に関する政治思想史研究
Project/Area Number |
20K13405
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
永見 瑞木 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 准教授 (10780629)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 代表民主政 / 18世紀後半フランス / コンドルセ / 米仏関係 / フランス革命史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は18世紀後半のフランス政治思想の展開における同時代アメリカへの参照(フランスにおけるアメリカ論)がもつ、政治学・政治思想史における意義を検討しようとするものである。本年度の中心的な作業は、引き続き一次・二次文献の収集と整理を行いながら、文献の読み込みを行い、分析を進めることにあった。言説の変化および論点の推移を捉えるために分けた三つの対象時期(①1770~80年代、②革命初期~テルミドール期、③総裁政府期)を念頭に置きつつ、本年度の作業は主に②の時期が中心となった。 同時代の重要な主題である国制論に関して、改めて取り上げたのは「代表制」の問題、とりわけアメリカとフランスでほぼ同時期に登場した概念である「代表民主政」をめぐる議論であった。具体的には、これまでの研究を踏まえて、同時代アメリカの政治に関心の高かったコンドルセの「代表民主政」の構想を、民主政と代表制の関係をめぐる同時代フランスの論争状況に位置づけ直した上で、その特徴を考察した。この研究成果は、日本政治学会において報告を行うとともに、紀要論文にまとめて公表した。またフランスの国内政治状況の変化の中での「連邦主義」をめぐる言説についての検討にも着手した。 またこれに関連し、次年度には上記の③の時期を扱う際に、同時代アメリカの連邦憲法をめぐるフェデラリストの議論のフランスでの受容という問題を一つの切り口と考えており、そのための文献調査など準備作業を進めた。 本研究のより広いコンテクストとしては、18世紀後半の環大西洋革命をめぐるグローバル・ヒストリーの研究潮流とも関心を共有している。この主題に関しては、オーストラリアの歴史家ピーター・マクフィによるフランス革命史の翻訳作業を進める中で、フランス革命史研究におけるグローバルな視点を重視する近年の新たな動向も調査した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
文献収集および資料の読み込み作業に予定していたよりも時間をかける必要が生じた。さらに本年度後半は、本研究課題とも関連が深いフランス革命史の翻訳作業が最終段階に入ったため、その作業に集中する時間が必要となった。また予定していた海外渡航は再び順延せざるを得なかった。こうした事情から、研究全体の進捗状況にやや遅れが生じた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度は最終年度となるため、8月以降に時期を見極めて海外渡航の機会を作り、必要な文献・情報の収集や可能であれば研究者との交流を行い、ここまでの研究の遂行において不足している部分を補いたい。 また引き続き分析作業を進める一方で、研究成果の学会での報告の準備に向けて、成果をまとめたい。
|
Causes of Carryover |
本年度も感染症の収束時期が見極めきれず、海外渡航を見合わせたため、旅費に計上していた額が次年度使用額として生じた。次年度に予定している海外渡航の費用に充てる予定である。
|