2022 Fiscal Year Annual Research Report
議会制の批判から擁護へ:モスカの現代的混合政体論の再検討
Project/Area Number |
20K13411
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
千野 貴裕 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (00732637)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 政治思想史 / イタリア政治思想 / モスカ / 混合政体論 |
Outline of Annual Research Achievements |
21世紀の世界において、議会制民主主義に対する批判が世界的に高まっている。だが、議会制に対する批判は今に始まったことではない。このことを踏まえて、本研究は、20世紀前半のイタリアの思想家ガエターノ・モスカが、一時は同時代の議会批判と歩調を合わせつつも、ファシズム台頭の時代に議会制度を擁護するようになった理由を検討することを目的としてきた。その際、モスカの態度変容の理由が、通例指摘されるファシズムの台頭とその反自由主義的性格が明らかになってきたという状況のみでなく、アリストテレスにまで遡る統治のパラダイムである、混合政体論の現代的形態として議会をみなすようになったという、彼の政治理論的展開に求められるとの仮説をもってきた。 本研究の第三年度(2022年度)も、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大の影響を被り、当初予定していた海外での史料収集と学会報告はできなかった。海外から資料や書籍を取り寄せることはなお可能であったが、円安の影響によって予定外に書籍費が増大し、一部は自前で購入せざるを得なかった。 研究成果の詳細は本研究全体の報告書にて詳述するが、本年度の研究成果の要点のみを簡潔に述べるならば、上記の仮説はかなりの程度正鵠を得ていただろうと言える。モスカの著作を詳細に検討すると、議会主義の擁護の文脈で混合政体論への言及がしばしばみられるものの、この点はいままで十分に検討されてこなかったことがわかった。この点は、政治思想の一般的視角に照らして有意義な検証がなされるだろうと考えられる。というのも、自由主義と民主主義の歴史的結びつきを通じて、現代の自由民主主義、つまり立憲主義と議会主義をもつ民主主義の体制が可能となったと一般的には叙述される。しかしモスカの事例は、自由主義に遥かに先立つ混合政体論の観点から議会主義が正当化されていたことを示しているからである。
|
Research Products
(1 results)