2021 Fiscal Year Research-status Report
The Consolidation of State Authority in Historical Perspective
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20K13413
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
佐々木 優 金沢大学, 法学系, 講師 (00822264)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国家発展 / 官僚制 / 近代化 / 検閲 / 正統性 / 欧州 / 近世 / 歴史政治経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国家における統治力発展(consolidation of state authority)を多角的に検討することを目的とし、欧州の歴史を紐解きながら実証研究を行なっている。2021年度は引き続き、オンラインでの学会報告やセミナー参加を通じて自身の研究の進捗報告や最新の研究成果の入手に努めた。 具体的な成果としては、国家統治における官僚組織の発展について、近世フランスを題材にした論文がJ. of Historical Political Economy誌から公刊された。この論文は本研究費を活用してオープンアクセスとし、成果を一般社会に還元することができた。 また、国家の統治力発展を文化的側面から説明するプロジェクトとして、近世フランスにおける啓蒙主義の浸透と王政の正統性に関する研究を新たに進めている。近世フランスでは、啓蒙主義の浸透により「個人の自由」に関する考えを社会に認知させる考えが広まり、関連著作が多く出版された。だがそうした考えは王政を正当化するイデオロギーを否定するため、国家は脅威と捉えた。そこで検閲を強化することで「自由」な考え方を統制しようと試みた。しかしながら、国家が理想とする検閲を行うには制度的基盤や技術が追いつかず、革命前には多くの禁書が社会に流布していた。本論文では、禁書の流布と国家(王政)の正統性を定量的に検証するプロジェクトを行っている。史学における研究では、17世紀後半から革命前夜を通じて数千冊もの禁書がフランス国内に流通していたとされ文献が残されているいるが、どのような本が禁書とされていたのかなど基本的な統計もなく定量的な研究はほとんどなされていない。本研究では、公刊資料を中心に禁書情報を集約・デジタル化しデータベースを新規構築することで、禁書の流通と国家の正統性に関する実証研究を行う。初稿は2021年度末に完成させ、2022年度に複数の国際学会で報告を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
論文“The Royal Consultants: The Intendants of France and the Bureaucratic Transition in Pre-Modern Europe”がJ. of Historical Political Economy誌から公刊(オープンアクセス) 新規論文"Weak States and Hard Censorship"を国際学会で報告(2件)
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Strategy for Future Research Activity |
国際学会報告が採択されているが、海外渡航は未だに現実的ではないため、オンラインでの報告・参加を予定する。可能な限り海外渡航を行わずとも国際誌に採択できるよう努めるが、対面でのネットワーキングを代替するのは不可能なため、渡航・入国制限を緩和することが研究の推進に大きく寄与する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍における日本政府の入国制限(水際対策)が厳しく、海外渡航は推奨されていなかった。従って、現地での学会参加は現実的ではなく、旅費が使用できなかった。入国制限が緩和され、海外渡航がより現実的(ワクチン3回接種者は隔離免除など)となれば使用できる。
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