2023 Fiscal Year Research-status Report
The Consolidation of State Authority in Historical Perspective
Project/Area Number |
20K13413
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 優 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 講師 (00822264)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 国家発展 / 政治正統性 / インフラ / 経済発展 / 欧州 / 近世 / 歴史政治経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国家の統治力発展(consolidation of state authority)を多角的に検討することを目的とし、欧州の歴史を紐解きながら実証研究を行なっている。2023年度は対面での国際学会報告・セミナー報告を積極的に行い、多くのフィードバック・知己を得た。 国際学会は、主に米国にて大小四つの年次学会・ワークショップ(全て査読付)に参加し報告を行った。主な報告論文は、革命前夜のフランスを題材とした、国家による出版物の検閲と政治的正統性(political legitimacy)との関係を検討する実証研究である。当時のフランスでは、啓蒙主義の広まりにより表現の自由を求める気運が高まったが、一方国家は王政や教会の権威を守るため検閲体制を強化していた。これまでに2,000冊超の禁書に関する情報をデジタル化し、どのようなタイトルや題材の本が狙われやすいのかに関する実証研究を行った。 別のプロジェクトでは、近世フランスにおける郵便網の発展を題材に国家の統治力発展について研究を行った。欧州では16世紀前後から郵便制度が刷新され配達スピードが顕著に上がった。当時は制度の改善を中心とするインフラ強化がなされたが、こうした状況でも経済発展への影響はあったのだろうか。本研究では、1553年から1835年までに発行された5つの郵便網地図をデジタル化し、地理的情報などを組み合わせた実証研究を行った。本年度は米大学のワークショップで報告を行い、その後国際誌へ投稿した。 また、これらの論文を日米の2大学におけるセミナーにて報告を行った。 最後に、こうした学会報告・ネットワーク構築を行ったことで新プロジェクトの着想を得た。これは新しい論文として2024年度のアメリカ政治学会に採択され、報告予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は対面での国際学会報告(全て査読付)に7回応募し4回採択され、また国内外の大学におけるセミナー報告を2回行った。ネットワーク構築を進めたと同時に、学会報告で得たフィードバックを元に国際誌への投稿を行った。また、「5」で述べた検閲論文について、データセットの拡充を行った。23年度中に見つけた新資料をデジタル化するため、データセット構築は現在5割を超えた状況である。これらを総合して「順調」とみなすことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は23年度が最終年度であったが、事業期間4年間(2020-23年度)のうち最初の3年はコロナ禍で研究費をほとんど執行できなかったため、補助事業期間延長を申請し受理された。24年度は5月時点で2件の国際学会報告(査読付)を予定しており、他にも4件応募した。
今年度はまず、「5」で述べた検閲論文について、データセットに追加すべき公刊資料を新たに発見したため、これのデジタル化を含めデータセットの拡充を行う。また、2件の国際学会報告のうち1件は新プロジェクトであるため、これに向けて新論文を執筆する。
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Causes of Carryover |
「8」で指摘したとおり、事業期間4年間のうち最初の3年はコロナ禍で研究費をほとんど執行できず、当初の計画どおりに進められたと言えるのは最後の1年のみであった。従って、補助事業期間を延長し、国際学会報告を中心に研究を進める。
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Remarks |
Yu Sasaki https://yusasaki.squarespace.com/
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