2020 Fiscal Year Research-status Report
国連における科学技術促進と規制の動き:国家、NGO、民間部門、国連の関係
Project/Area Number |
20K13422
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
足立 香 東京大学, 大学院総合文化研究科, 学術研究員 (70866714)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国際制度論 / 国際連合 / 科学技術開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際政治において、(1)持続可能な開発目標(SDGs)にみられるように科学技術促進をターゲットに含め科学開発を推進する流れと、(2)自律型兵器開発にみられるような科学技術の持つリスクに注目し科学技術を規制しようとする流れ、というふたつの流れが活発化している。国連事務総長は、2018年に科学技術に対して異なる選好をもつ主体間の調和が必要だと提言したが、科学技術の利点とリスクの線引きは判断が難しく、調和には難しい舵取りが必要になる。本研究は、科学技術に関して異なる選考をもつ主体が、国連を通してどのように国際政治に影響をおよぼそうとし、また国連が科学技術に対する相反するふたつの流れに対して、どのように対応しているかを明らかにすることを目的としている。
2020年度は、国連の議事録、レポート、決議などの一次資料の調査を行った。2018年、国連事務総長が新しい科学技術に関する国連の戦略を発表したことに注目し、2018年から第一次資料を調査したところ、1988年に科学技術と安全保障に関する総会決議が採択された後、2006年まで国連事務総長がフォローアップとして毎年報告書を国連総会に提出していたことがわかった。報告書の提出は、2018年より再開されている。そこで、調査の対象期間を、当初計画していた2018年ではなく1988年を起点とし、より長くする必要が生じた。また、理論枠組みについて、オーケストレーションの理論枠組みを想定していたが、これまでに調査した国連総会における議論を考慮したところ、他の理論枠組みを検討する必要を感じ、ネットワークの理論枠組み、フォーラムショッピングの理論枠組み、レジームが存在しない事例を検証する理論枠組み、などを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、科学技術を推進する主体の動向、科学技術を規制しようとする主体の動向、科学技術に関する国連の取り組みの3つの動向を調査する計画をたてている。2020年度、全体像を把握するために国連公式文書の調査から着手したところ、「研究実績の概要」で述べたように調査対象の期間を長くする必要が生じた。当初予定に含まれていなかった調査の一部を2021年度に繰り越すこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、科学技術の促進および規制をめぐるアクターの動向についての資料を引き続き調査する。2020年度の調査から、国連総会における議論が重要な役割を果たしてきたことが明らかになったので、国連総会における議論や国連総会に提出されたレポートに焦点をあて、それらをより詳細に分析する予定である。また、分析枠組みの再考察を行う。2022年度は、分析枠組みの精緻化、調査および分析結果のまとめ、成果の発表に結びつけたい。
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Causes of Carryover |
2020年度は、新型コロナウィルス感染拡大のため旅費を使用することができず、未使用額が発生したが、2021年度後半、あるいは2022年度に使用する予定である。
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