2022 Fiscal Year Annual Research Report
国連における科学技術促進と規制の動き:国家、NGO、民間部門、国連の関係
Project/Area Number |
20K13422
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
足立 香 東京大学, 大学院総合文化研究科, 学術研究員 (70866714)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国際制度 / 国際連合 / 科学技術開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、科学技術開発について、その恩恵に注目し積極的に促進する動きと、科学技術開発がもたらす非人道的な結果を回避するために規制しようとする動きに注目し、それらが国連を通して国際政治にどのような影響を与えているのか、また国連は、科学技術開発に関して異なる選好を持つ主体をどのように調和させようとしているのか、について明らかにすることを目的としている。
国連総会公式文書を国連設立時より調査した結果、開発の観点から科学技術開発を促進する決議が繰り返し採択されている一方で、安全保障の観点から科学技術開発を規制する必要性を強調する決議も多数採択されている。これらの決議において、促進すべき科学技術開発と規制すべき科学技術開発は明確に区別されていない。
科学技術開発という国家のパワーに寄与する政治的課題において、加盟国から限られた権限のみ与えられている国連が、どのような機能を果たすことができるのかを明らかにするために、国連事務総長が発表した科学技術開発に関する文書を調査した。その結果、国連の取り組みの方向性が時代によって変化していることが明らかになった。国連事務総長が、取り組みの方針を発表した時期は、1990年および1994年と2018年である。1990年代には、科学技術開発を評価するための指標作りやクリアリングハウスなどを提言し、国連が主導して重複する科学技術開発に関する国際制度を「調整」する機能を果たそうとしていた。2018年になると、多様なステークホルダーの協力を呼び掛け、共同で取り組むことを提案し、「オーケストレーション」を行おうとしていた事が明らかなった。この背景には、国境を越えて活動する非国家主体が増加したことや、焦点となっている科学技術が、民間からのアクセスが限定されている核に関するものから、人工知能やドローンなどの民間からもアクセスしやすいものへと変化したことが背景にあった。
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Research Products
(1 results)