2020 Fiscal Year Research-status Report
1930年代のワシントン体制をめぐる日英米関係ー協調・妥協・対立
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20K13427
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
湯川 勇人 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 准教授 (00824393)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 門戸開放主義 / 日本外交 / 日米関係 / 日英関係 / 英米関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はコロナウイルスの影響により、予定していた海外での資料収集および東京での資料収集を実施することはできなかった。そのため、文献調査および刊行されている資料の調査を行いながら、リサーチデザインの再検討を重点的に行なってきた。 以上の文献調査と並行して、本研究課題が取り扱う戦間期の前史となる20世紀初頭の日英米関係について、各国の門戸開放主義の取り扱い方針およびその変化に着目しながら分析を進めた。当該期の資料については多くがインターネット上で公開されているということもあり、コロナ禍でも十分に研究を進めることができると判断したためである。加えて、本研究課題の主題である戦間期の日英米関係を、より広い国際関係史、日本外交史の中に位置づける上でも、必要な作業である。 アメリカやイギリスの外交的援助のもとで日露戦争に勝利した日本は、同戦争で獲得した南満州権益を発展させていくことが外交的課題となる。一方、アメリカが要求しイギリスも承認した中国における門戸開放、機会均等主義を尊重することは、対英米関係を維持していく上で必至であった。一見して背反するこれらの外交課題を、当該期の日本はいかにして成し遂げたのか。主に公刊資料を用いて、小村寿太郎や林董といった外交官、元老、陸軍の大陸外交方針とそこに内在する門戸開放主義認識を抽出することで、以上の問いに答えることを試みた。その内容をまとめた論文は、2021年度6月に刊行される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度に予定していた海外での資料収集および東京での資料収集を実施することができなかった。一方で、本研究課題に関連する先行研究の状況を整理すると同時に、公刊されている資料を用いて研究課題の前史となる時期の日英米関係に関する研究を進め、論文を執筆した。以上をもって、「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、コロナウイルス禍が収束に向かえば、アメリカの公文書館での資料収集を行う。それが難しい場合は、非常に高額ではあるが、米国国務省のセントラル・ファイルを有料のデジタルアーカイブで購入し、その代替にする。これらの資料を用いて、中国問題めぐって行われる日英間の妥協や対立をアメリカがどのように認識し、その認識がアメリカの対日外交方針および対英外交方針にいかなる影響を与えていたのかを明らかにする。 2022年度はイギリス公文書館での資料収集を行う。それが難しい場合は、東京の国立公文書館にイギリスの外交文書の一部がマイクロフィルムで保存されているため、その収集、分析をもって代替する。これらのイギリス側資料を用いて、中国問題をめぐって日米間で妥結あるいは対立が生じたとき、それはイギリスの対日外交方針および対米外交方針にいかなる影響を与えたのかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初予定していた海外での資料収集を実施することができなかったため、その分の費用が次年度使用額として生じた。この次年度使用額は、次年度、海外及び国内での資料収集、または米国国務省外交文書のデータベース購入に使用する。
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