2021 Fiscal Year Research-status Report
The Peace Dividend: A Conflict Analysis after a Decade of the Independence of South Sudan
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20K13432
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
小林 綾子 上智大学, 総合グローバル学部, 助教 (50845146)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 紛争 / 紛争解決 / 平和 / 和平交渉 / 国際政治 / 国際機構 / スーダン / 南スーダン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、紛争アクターの特徴を理解することにより、国連平和活動の改善策を検討することである。3つのサブテーマとして、(1) 紛争アクターの特徴を理論的に整理すること、(2) 国連平和活動の変遷を整理すること、(3) そして紛争当事者から見た国連の政策上の課題を指摘することを設定した。 新型コロナウイルスの世界的流行により、2020年度に続き、2021年度も、本研究で予定していた海外調査は実施困難であった。そこで、2020年度に研究した「国連平和活動とローカルな平和」の議論で指摘した「平和の多面性」に着目し、和平合意を締結しても紛争を繰り返す場合があるのははなぜかという問いを考察した。最近の武力紛争のほとんどは新しく発生するのではなく、繰り返している、と主張する最新の内戦研究をヒントに、紛争を繰り返すなら和平プロセスも繰り返していることに着目し、その条件を探る、学術的にも政策的にも意義のある研究を行った。加えて、紛争下の人びとの共生の課題、政府間機関である国連と市民との関係に関し、文献研究による理論研究と事例研究をつうじて考察した。 以上の研究成果を、北米の国際関係学会(ISA)年次研究大会、国連学術評議会(ACUNS)年次研究大会、ハーバード法科大学院グローバル法政策研究所のグローバル・スカラーズ・アカデミー、第20回東アジア・セミナーでオンライン形式で口頭にて報告し、日本国内外の研究者から今後の研究発展に向けた助言を受けることができた。口頭報告の他に、論文を投稿中である。また、「中東・イスラームの政治変動」プロジェクトで執筆した「スーダン」が発行された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究をつうじて、一筋縄ではいかない紛争後の平和構築のありかたを、平和の多面性というキーワードを考えながら、2020年度にはローカルな平和という観点で、2021年度には和平合意が必ずしも履行されずに紛争が繰り返されるという問題について、検討できた。その際には、研究計画に示した通り、紛争当事者の論理を考察することを通じて、翻って、広い意味での平和活動に携わる国連をはじめとする国際社会の課題を検討した。平和の多面性から、紛争下の人々の共生や、国連と市民、人間の安全保障とジェンダーといったより広い話題にも目を向けて考察を行うことができた。その成果を、積極的に国内外の学会等で報告し、オンラインながら研究者との意見交換も活発におこなえた。以上のことから、評価としては「おおむね順調に進展している」といえる。 ただし、新型コロナウイルスの世界的流行により、南スーダンあるいはその周辺国での現地調査、国連本部でのアーカイブ調査など、海外渡航を伴う調査はできていないため、当初の計画であればできていたはずの海外調査をふまえた研究ができていないことが課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に海外調査が可能となり、状況が許せば、夏季あるいは冬季に東アフリカ(スーダン、南スーダン、エチオピア等)に渡航し、現地調査を実施し、2011年から10年を経過した南スーダンの紛争と平和について、政府関係者、国連関係者、外交団等への聴き取りをおこない、これまでまとめてきた議論を最新情報を踏まえて再検討する。 海外調査実施可否にかかわらず、本研究の3年目のまとめとして、2022年度は、博士論文以降の研究成果をふまえた、英語論文の執筆および投稿、加えて書籍の執筆および出版を目指す。紛争にかかわる難民・国内避難民問題、新しい紛争の形態としての市民的抵抗、国際情勢の変化により危機に直面する国連の組織・制度上の課題にも目を向ける。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの世界的流行により、海外調査ができなかったため、旅費や人件費の出費がなく、その分文献調査により物品費の出費が大きくなっている。2022年度に状況が許せば、海外調査を実施する計画であるが、英語論文および書籍の執筆のため、引き続き文献調査を中心とする研究費使用が見込まれる。
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