2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K13433
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Research Institution | Tsuda University |
Principal Investigator |
湯澤 奈緒 (下谷内奈緒) 津田塾大学, 学芸学部, 講師 (20823884)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 歴史認識 / 責任追及 / 和解 / 植民地支配 / 被害者の権利 / 賠償 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年(2021年)度は前年度に行った歴史認識をめぐる国際的な責任追及の動態に関する研究を基に、責任追及を和解に繋げるための条件について考察した。考察は、過去の植民地支配や戦争の責任を追及する訴訟のうち、原告に有利な判断が出された例外的な事例であるインドネシア独立戦争期のオランダ軍による住民虐殺(ラワグデ事件)に関するオランダ・ハーグの地方裁判所判決(2011年)と、ケニア独立闘争(マウマウ団の乱)時の拷問被害者からの訴えに裁判所の管轄権と審議入りを認めたロンドン高等法院の判断(それぞれ2011年、2012年)の二つの事例の分析を、対日戦後補償裁判と比較する形で行った。その結果、加害国の側で社会の広範な関心を喚起する出来事の有無が広範な国民的議論を喚起するうえで重要であること、このことが社会的な和解の重要な要因となるとの知見を得た。研究成果は令和3年(2021年)5月29日に行われた日本平和学会2021年度春季研究大会で報告した後、加筆修正し、現在、査読学術誌に投稿中である。 さらに過去の植民地支配や戦争責任を問うグローバルな動きの要因の一つである、国際犯罪における被害者の権利の国際的進展についても調査を行い、令和3年(2021年)10月31日に行われた日本国際政治学会2021年度研究大会・平和研究分科会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に行った植民地支配や戦争責任の追及に関するグローバルな動態の解明をもとに、具体的な事例研究を行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
国際刑事裁判所(ICC)における被害者賠償の分析を行い、和解の意義についてさらに考察する予定である。
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Causes of Carryover |
本年(令和3年/2021年)度も新型コロナウイルス感染症の影響で、予定していた海外での聞き取り調査を行わず、主に文献調査によって事例研究を行った。今後の状況にもよるが、状況が改善すれば海外での聞き取り調査や文献収集、国際学会での研究成果の発表を検討したい。
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