2020 Fiscal Year Research-status Report
Fundamental Rights Violation by the EU and its Rectification: Empirical Research of "Inter-organizational Contestation"
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20K13437
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大道寺 隆也 早稲田大学, 政治経済学術院, 講師(任期付) (70804219)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国際機構 / EU / IOM / UNHCR / 難民 / グローバル・ガヴァナンス / デモクラシー |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度のうちに公表された研究成果は次の2点である。第一に、オンラインで開催された欧州政治研究コンソーシアム (European Consortium for Political Research, ECPR) の研究大会(2020年8月26日)において、"EU-IOM-UNHCR Relations and Human Rights of Migrants: Subcontract or Contestation?" と題する学会報告を行い、参加者からのフィードバックを得た。同報告は、主にアフリカや中東からヨーロッパに向かう庇護希望者 (asylum seekers) の処遇に関するEU(欧州連合)の諸政策を、IOM(国際移住機関)およびUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)との関係性の中で分析したものである。第二に、日本国際連合学会主催の国際シンポジウム "The Future of Struggling Liberalism and the United Nations: East Asian Perspective in the Age of COVID-19" (2021年3月21日)において、"The case for 'global contestatory democracy': Individuals' contestation against global governance" と題して報告を行った。同報告では、グローバル・ガヴァナンスの負の影響を被る諸個人に着目しつつその「民主化」の議論を洗い直し、《グローバルな異議申立デモクラシー》を構想していく必要性について述べた。なお、両報告の資料(ペーパーやスライド)は、Researchmapから閲覧することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では、2020年度には、EU(欧州連合)の(1)対テロ政策に関するインタビュー調査と、(2)庇護政策に関する資料調査を実施する予定であった。このうち(1)は、事実上、一時的に棚上げとなっている。その理由は次の2点である。第一に、COVID-19(いわゆる新型コロナウイルス感染症)の流行のため、ベルギーに渡航してEUの職員とのネットワーキングを行い、インタビュー調査を行うという作業の目処が立たないからである。第二に、研究対象としているEUの対テロ政策自体に大きな進展が生じる見込みがあったため、その進展を待って研究に着手したいと考えたからである(実際に、2021年4月に『テロリスト・コンテンツ・オンライン指令』が採択されるという進展があった)。これらの理由で、対テロ政策に関する新規研究の進捗は大きくない。もっとも、2020年4月に刊行された、前年度(2019年度)まで遂行していた予備研究の成果(臼井陽一郎編『変わりゆくEU:永遠平和のプロジェクトの行方』所収論文「欧州テロ政策をめぐるEU・CoE関係:テロ防止と基本権保障」)を増補して新たな英語論文を執筆する作業には着手している。一方、(2)については、インタビュー調査の段階にこそ進めなかったものの、一定の進捗があった。特に、EUの域外出入国管理が、国際連合(国連)における制度変化(具体的には、IOM[国際移住機関]の国連『関連機関』化)の影響を受けている可能性が見えてきた点は、重要な進捗であった。こうした成果は、前項で述べた学会報告で逐次発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きEUの対テロ政策と庇護政策を、基本権侵害(およびその匡正)という観点から分析していく。ただし、現時点(2021年5月)において新型コロナウイルス感染症の終息の見込みが立たず、海外渡航を伴う実地調査がきわめて困難であることに鑑みて研究計画を修正し、以下の通り遂行する予定である。対テロ政策に関する論文を書くためには、関連法案の起草や採択に関与したステークホルダーへのインタビューによって議論の裏付けをとることが望ましく、今後はオンラインでの接触およびインタビューの依頼を試みる。しかし、現時点では、インタビュー調査を行わず、Webで入手可能な文書類のみに基づいて執筆することも可能だろうと見込んでおり、英語査読誌への投稿に向けて、前項で述べた通り、執筆をすでに開始しており、完成・投稿の見込みは2021年度末である。(2)の庇護政策については、庇護政策はとりわけ新型コロナウイルス感染症の影響を受けるため、対テロ政策以上に実務家とのコンタクトは困難である。したがって、オンラインでのインタビュー調査遂行は試みつつも、研究の力点を、一時的に、Webで入手可能な一次資料に基づく先行研究の批判という作業に切り替える。庇護政策に関してはすでに2本の論文執筆を開始している。第一は、EU域外出入国管理政策を立憲主義の観点から分析する邦語論文で、査読付国内学会誌への投稿を予定している。第二は、国際機構間関係論の観点から、EU域外出入国管理政策を批判的に検討する英語論文である。いずれの論文も今年度中に完成することが見込まれている。
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Causes of Carryover |
いわゆる新型コロナウイルス感染症の影響を受け、予定していた海外渡航調査(ならびに研究に関連する国内出張)が実施できなかったため、旅費の支出ができなかったことによる。その分は、2021年度以降、出張が可能になった際に支出するほか、文献類の渉猟および英文校正費用に回す予定である。
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Remarks |
大道寺隆也「欧州テロ対策をめぐるEU・CoE関係――テロ防止と基本権保障」臼井陽一郎編『変わりゆくEU――永遠平和のプロジェクトの行方』明石書店、2020年、89-193頁。
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