2021 Fiscal Year Research-status Report
金融商品市場指令(MiFID)の形成に民間アクターが及ぼした影響の検討
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20K13442
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
石田 周 愛知大学, 地域政策学部, 助教 (50823910)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | MiFID / 株式市場 / 金融機関 / 内部化 / 証券取引所 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、金融機関と証券取引所による影響力に注目することで、投資サービス指令(ISD)から金融商品市場指令(MiFID)への株式取引制度の変遷を検討した。その際のアプローチとして、①EUにおける金融機関と証券取引所の競争関係の分析、②金融機関と証券取引所が持つ選好の分析、および、③EU金融サービス政策の形成に関する分析という、「3段階のアプローチ」を用いた。結果は以下である。 ISDを巡る交渉時期には、英独仏は異なる株式取引制度を持っており、各市場の内部では主に国内の金融機関が仲介業務を担っており、ロンドンには多数の外国の金融機関が参入していた(第1段階)。そのため、各国の金融機関と証券取引所は、自国の株式取引制度の維持を選好として持っていた(第2段階)。ISDの交渉では、各国政府は自国内で活動する金融機関の選好に沿って行動し、「地中海クラブ」と「北海同盟」という2つの陣営に分かれて対立した。結果、株式取引に関するルールの調和はなされず、集中義務は選択制となった。この点で、各アクターの選好はいずれも十分に実現せず、妥協の産物となった(第3段階)。 他方、MiFIDを巡る交渉時期には、欧銀による投資銀行業務への参入と国際化、株式取引の「内部化」の拡大、証券取引所の株式会社化と統合などが生じた(第1段階)。このことから、金融機関は広く内部化を可能にするために集中義務の廃止を求めたのに対し、証券取引所は集中義務の維持または高度な透明性要件を求めた(第2段階)。MiFIDの形成過程では、EU諸機関の立場は異なる形で、金融機関または証券取引所と結びついていた。最終的に採択されたMiFIDでは、内部化に厳格な取引前の透明性要件が課されることになったものの、その対象は「体系的内部化業者」に限定された。この点で、金融機関の選好がかろうじて実現された(第3段階)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス蔓延の影響により、資料収集に遅れが生じていたことから、研究成果は日本国際経済学会で報告できたものの、論文という形でまとめるまでには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに研究成果のほとんどは明らかとなり、日本国際経済学会にて報告を行った。次年度は、得られたデータの再検討を通じて金融市場の変化に関する分析をより精緻化し、研究成果を学術雑誌に掲載することを目指す。
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